2020 Fiscal Year Research-status Report
Revealing the symbiotic mechanisms from useful metabolites of dinoflagellates in corals
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20K05798
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
將口 栄一 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (90378563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 麻友子 岡山大学, 理学部, 特別契約職員(助教) (40378584)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高温耐性褐虫藻のゲノム / 共生クロレラ / マイコスポリン様アミノ酸 / 遺伝子クラスター / 二次代謝産物 / 光エネルギー / バクテリア / サンゴ白化現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的規模で起こっているサンゴ白化現象(サンゴと渦鞭毛藻の共生関係の崩壊)に直接関係のある共生性渦鞭毛藻類には、白化に耐性のある種と弱いと考えられる種が含まれる。2020年度は、白化に強い渦鞭毛の二次代謝産物による生物間インターラクションを明らかにするための基盤を得るために、白化に強い渦鞭毛藻Durusdinium trenchiiのゲノム概要配列を解析し、論文としてその結果を報告した(Shoguchi et al. 2021)。比較ゲノム解析により、白化に強いと考えられる渦鞭毛藻2種(Symbiodinium tridacnidrumとDurusdinium trenchii)のゲノムには、紫外線防御物質として知られるマイコスポリン様アミノ酸(MAA)合成の新規の遺伝子クラスター(MAA-GMCクラスター)がコードされていることを明らかにした。興味深いことに、MAA合成遺伝子クラスターの3’側には、光酵素遺伝子を含むGMCオキシドリダクターゼのホモログがコードされており、このGMCオキシドリダクターゼが光に反応することにより、MAA合成の調節機能を担っている可能性が示唆されたのである。一方で、白化に弱い渦鞭毛藻2種のゲノムにはその遺伝子クラスターは見つけられなかった。さらに、S. tridacnidrumとD. trenchiiの約20 kbのMAA-GMCクラスターの配列は、イントロン領域や遺伝子間領域の配列を含め、高度に保存されていた。この結果に基づいて、MAA-GMCクラスターが共生性渦鞭毛藻間において水平伝播しているという仮説をたてた。このMAA-GMCクラスターの水平伝播メカニズムが、複数種の渦鞭毛藻を含むサンゴホロビオント(サンゴとその共生微生物)の多様化と環境適応に部分的に関わってきているという可能性を議論したミニレビュー論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高温耐性渦鞭毛藻Durusdinium trenchiiのゲノム概要配列を世界に先駆けて報告することができた。またSymbiodinium tridacnidrumとの比較解析により、新規のMAA-GMCクラスターが、高度に保存された配列からなることを明らかにした。これまでの渦鞭毛藻MAA遺伝子クラスターの発見をミニレビューにまとめ、そこでは渦鞭毛藻間で遺伝子水平伝播が起こっているという仮説をたてた。このように2本の論文にまとめることができ、計画以上に研究が進んだ。また2種の渦鞭毛藻のMAA合成酵素の機能解析を予定していたが、比較解析により合成酵素の配列は高度に保存されていることが明らかになった。よって、今後の異種細胞発現系による酵素の機能解析は、当初の半分程度に減少させても問題ないと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の解析により、2種の高温耐性渦鞭毛藻のゲノム上に紫外線防御物質(MAA)合成の遺伝子群が存在し、高度に保存されていることを明らかにすることができた。今後は次のように研究を進める。1. 高温耐性渦鞭毛藻1種の光酵素を大腸菌内で発現させるためのコンストラクトを作成する。2. 高温耐性渦鞭毛藻1種のMAA合成のコアタンパクDHQS-likeの発現コンストラクトを作成する。3. 機能が明らかになっているクロレラの光酵素のホモログを共生クロレラのゲノムから同定し、コントロールとして用いるためにその発現コンストラクトを作成する。4. 大腸菌から光酵素タンパク質とDHQS-likeタンパクを精製し、基質候補を加え、酵素の活性を調べる。5. 酵素活性の得られた基質を大腸菌に加え、in vitroでも酵素活性があるのかを調べる。6. 精製した酵素の活性を確認できた際には、光、温度、pHを変化させ、酵素活性の特徴づけを行う。7. in vitroで二次代謝産物を合成できた際には、質量分析等を用いて、二次代謝産物を精製する。その二次代謝産物をこれまでに単離している共在バクテリアや宿主であるサンゴにさらした際にどのような反応を示すのかをトランスクリプトーム解析を用いて明らかにし、論文としてまとめる。共生クロレラの二次代謝産物の解析は、主に研究分担者が担当して進める。得られた研究成果を基盤として、白化に強い渦鞭毛藻の二次代謝産物の生物間インターラクションにおける役割を明らかにし、サンゴ礁に生息する生き物の多様性を回復させるための方法の対策立案に資する。
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Causes of Carryover |
論文の執筆等を優先し、研究打ちあわせや学会発表のための旅費申請の機会が得られなかった。2021年度は遺伝子の機能解析と論文掲載のための費用が必要となる予定である。
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