2020 Fiscal Year Research-status Report
異種遺伝子を発現させたロドコッカス細胞を反応場とする物質変換系の開発
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20K05805
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉田 豊和 岐阜大学, 工学部, 教授 (90220657)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Rhodococcus / 微生物変換 / イミン還元酵素 / 異種発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
Rhodococcus erythropolis L88を宿主とし、3株の放線菌由来イミン還元酵素遺伝子を異種発現させ、大腸菌宿主との発現挙動の比較した。作製した組換えたを用い、イミン還元反応に必要な補酵素NADPHの再生系構築の必要性を検討した。また、Rhodococcus属細菌の多くは有機溶媒耐性を示すという知見にもとづき、有機溶媒存在下でのイミン還元反応を大腸菌宿主の場合と比較した。それぞれの詳細は以下の通りである。 Rhodococcus erythropolis L88用ベクターとして3種のプラスミドが利用できるが、イミン還元酵素遺伝子の発現はチオストレプトン誘導型のpTip系ベクターで良好であった。放線菌3株由来のイミン還元酵素遺伝子のGC含量は67-69%であり、大腸菌宿主よりもRhodococcus宿主において発現が顕著に向上する傾向が認められた。 イミン還元酵素によるイミンの不斉還元反応には、補酵素としてNADPHが必要であり、大腸菌を宿主とする場合ではグルコース脱水素酵素遺伝子の共発現が必要である。一方、Rhodococcus宿主では内在のグルコース脱水素酵素によってNADPH再生が可能であると言われている。このNADPH再生系が十分に機能するかを検証した結果、グルコース脱水素酵素遺伝子を導入せず、グルコースを添加するのみでイミン還元反応が進行することが判明した。 宿主細胞の有機溶媒耐性の検討として、水溶性有機溶媒を5%(v/v)添加した反応系においてイミン還元反応を実施した結果、エタノール、アセトニトリル、酢酸エチルでは活性はほぼ維持された。大腸菌宿主と比べて有機溶媒耐性が高く、難水溶性基質の酵素変換に適する細胞特性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3株の放線菌由来イミン還元酵素を用いて研究を進め、高GC含量の酵素遺伝子をRhodococcus宿主で発現させることができた。今後、Rhodococcus宿主の培養特性を踏まえて、遺伝子発現条件の最適化を行う必要があると考えている。宿主細胞において補酵素NADPHの再生系がグルコースの添加のみで機能することが確証できたこと、また、宿主細胞の有機溶媒耐性の高さについて知見を得たことは、微生物細胞を用いる物質変換プロセスの構築にとって有用な事象である。
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Strategy for Future Research Activity |
イミン還元酵素については遺伝子発現条件を最適化した後、これまで微生物変換が困難であった難水溶性イミンを有機溶媒存在下で酵素的に不斉還元する実験を進める。また、イミン還元酵素以外の酵素をRhodococcus宿主で異種発現させて、酵素機能解析を行う。具体的には、大腸菌では全て封入体となったBoc基脱離酵素、大腸菌では低レベルでしか発現しなかったマロン酸ジエステルの立体選択的エステラーゼを対象とする。研究対象とする酵素の幅を広げ、Rhodococcus宿主細胞の有用性の一般化を図る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のために大学建屋内への立ち入り禁止・自粛期間があり、研究を実施する時間が限られ、伴って物品費の使用額が予定より少額となった。令和3年度には、研究対象とする微生物酵素の範囲を拡げた実験を計画しており、遺伝子組換え用試薬、分析用試薬などの経費が必要となる。
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Research Products
(1 results)