2022 Fiscal Year Annual Research Report
放線菌のNO signaling及びNO恒常性維持機構の解析
Project/Area Number |
20K05811
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
佐々木 康幸 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (50398814)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 放線菌 / Streptomyces / NOシグナリング / NO恒常性維持機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、放線菌Streptomyces coelicolorA3(2) において、一酸化窒素(NO)により制御される遺伝子群の網羅的解析を行った結果、複数のNO誘導性遺伝子群を見出した。その中で、金属イオンのキレーター分子であるシデロフォアの生合成遺伝子群の発現が顕著に誘導されたため、その生理的な意義の解明を試みた。本菌ではNOシグナリングを成立させるために、細胞増殖に伴いNO恒常性維持機構関連タンパク質及び酵素群の生産活性が上昇することが示唆された。これらNO代謝系のタンパク質群は鉄を必要とする。その為、NOシグナリングに関連する抗生物質生産及び形態分化を正常に行うために細胞内鉄イオンが不足しないようシデロフォアを生産し環境中から鉄を積極的に取り込んでいることが示唆された。 また、放線菌が特徴的に有する低分子チオール化合物であるミコチオールについても細胞内NOとの関連性を見出した。ミコチオール生合成遺伝子を欠損させたところ、細胞内で生産されるNO量に影響が現れ、抗生物質の生産量に影響を及ぼした。ミコチオールは細胞内NOと相互作用し、その量を調節する因子であることが示唆された。また、NO依存的な転写調節タンパク質のリン酸化部位についても解析し、二か所のアミノ酸について重要であることが明らかとなった。 研究機関全体を通して、放線菌が内在的に生産するシグナル因子NOが抗生物質の生産及び形態分化を制御する遺伝子、タンパク質、酵素など分子機構のいくつかを強く示唆するに至った。
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