2021 Fiscal Year Research-status Report
微生物と植物の細胞間相互作用に着目した植物免疫活性化微生物および化合物の探索
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20K05812
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
古屋 俊樹 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 准教授 (20367064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朽津 和幸 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 教授 (50211884)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植物免疫活性化微生物 / 内生菌 / 微生物農薬 / 植物培養細胞 / 活性酸素種 / 細胞間相互作用 / アブラナ科植物 / 植物病原菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微生物と植物の細胞間相互作用を基盤とした、植物免疫を活性化する微生物の新しい評価手法を確立し、免疫活性化剤として効果を発揮する新規微生物および微生物由来化合物を取得することを目的としている。令和2(2020)年度は、微生物を植物培養細胞と試験管内で接触させ、植物培養細胞の免疫応答の指標として活性酸素種(ROS)生成を計測することにより、微生物の植物免疫活性化能を評価する手法を確立した。さらに、アブラナ科のコマツナから31株の内生菌を分離し、確立した評価手法に供したところ、Delftia属およびArthrobacter属の細菌が陽性を示した。これらの細菌はシロイヌナズナの病害抵抗性を亢進することもできた。 令和3(2021)年度は、植物免疫活性化内生菌が有する植物免疫活性化成分の解析を実施した。まず、上述のDelftia属およびArthrobacter属の細菌が有する植物免疫活性化成分の局在や熱安定性を解析した。その結果、Delftia属細菌のROS生成亢進成分は菌体に保持されており、熱に安定な化合物であることが明らかとなった。一方、Arthrobacter属細菌の当該成分は菌体外に分泌されており、熱に不安定なことからタンパク質であることが示唆された。このように、内生菌は属種により異なる多様な植物免疫活性化機構を有している可能性がある。 一方、アブラナ科のダイコンからも25株の内生菌を分離した。これらの細菌を確立した評価手法に供したところ、6株の細菌が陽性を示した。これらの細菌をシロイヌナズナの幼苗の根に接触させたところ、5株はシロイヌナズナの生育に影響を与えずに内生した。さらに、トマト斑葉細菌病菌で処理したところ、2株のPseudomonas属細菌はシロイヌナズナのこの病原菌に対する抵抗性を向上させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3(2021)年度は、「植物内生菌の収集」、「植物細胞を利用したスクリーニング」、「植物体を利用した耐病性試験」、「内生菌からの活性本体化合物の分離」の実施を計画していた。1つ目の「植物内生菌の収集」については、コマツナに加えて、ダイコンからも25株の内生菌を分離した。2つ目の「植物細胞を利用したスクリーニング」と3つ目の「植物体を利用した耐病性試験」については、BY-2細胞のROS生成を指標としたスクリーニング手法により、6株のダイコン内生菌が陽性を示し、その中で2株の細菌はシロイヌナズナの病害抵抗性を亢進することもできた。4つ目の「内生菌からの活性本体化合物の分離」については、Delftia属およびArthrobacter属の細菌が有する植物免疫活性化成分の局在や熱安定性を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4(2022)年度は、BY-2細胞のROS生成を指標としたスクリーニング手法により陽性を示したダイコン内生菌について、植物体を利用した軟腐病菌に対する耐病性試験を実施する。また、これまでにDelftia属およびArthrobacter属の細菌が有する植物免疫活性化成分の局在や熱安定性を明らかにすることができたが、精製を進めて成分を同定する。合わせて、ダイコン内生菌が有する植物免疫活性化成分についても同様に解析する。化合物を同定できたら、その化合物の植物免疫活性化能や生物活性を詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額はわずかであり(69円)、端数として生じた。 次年度使用額はわずかであり(69円)、消耗品費として使用することを計画している。
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Research Products
(5 results)