2021 Fiscal Year Research-status Report
シアノバクテリアにおける鉄欠乏ストレス耐性機構の解明
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20K05814
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
水澤 直樹 法政大学, 生命科学部, 教授 (80342856)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光合成 / シアノバクテリア / 鉄 / 光化学系 / 電子伝達系 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)鉄欠乏条件下でのシアノバクテリアの増殖と吸収スペクトル変化の解析 前年度に確立した細胞の吸収スペクトル測定法を用いて、シアノバクテリアのAnabaena sp. PCC 7120を鉄欠乏下に曝したときに細胞の増殖と吸収スペクトルが影響を受けるかを検討した。細胞を鉄欠乏下で培養すると、一過的に細胞の増殖速度が低下したが、次第に増殖が回復する現象が観察された。鉄欠乏下で培養した細胞では、通常の培地で培養した場合と比較して、クロロフィルのQYピークの位置がシフトすることから、鉄欠乏下に適応したクロロフィルを結合したタンパク質複合体が生成していることが示唆された。 2)高活性なチラコイド膜標品、光化学系II標品と光化学系I標品を単離するための細胞破砕法の検討 鉄欠乏の光合成への影響を判定するために、鉄の存在下、非存在下で培養したシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803とAnabaena sp. PCC 7120からチラコイド膜、光化学系IIおよび光化学系I標品を単離し、その特性変化を解析する必要がある。光化学系標品単離過程では細胞破砕時に活性低下がおこりやすい。そのため、前年度から、細胞のビーズ破砕処理をおこなう機器をbead beater(Biospec products社製)からFastprep(MP biomedical社製)に変更し、Fastprepを用いて、破砕条件の検討をおこなってきた。この条件検討で、従来のbead beater破砕よりも、活性を低下させず、短時間で効率的に破砕できる条件がみつかった。その条件で破砕した細胞ホモジェネートから、PSII標品とPSI標品の両者を精製するための条件検討をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も2020年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、感染防止措置として、大学キャンパス内への入構制限がおこなわれた。その影響で、実験の進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も新型コロナウィルス感染症の広がりにより、大学キャンパス入構制限の期間が長く続き、継続的な研究を実施することが困難であった。しかし、2021年度の間に、ワクチン接種が進むと同時に、キャンパス内で教室・実験室の換気を増強するなどの措置で、感染を防止しながら、対面授業を実施することがほぼ可能になった。2022年度新学期開始時においては入構制限が解除されている。そのため、2022年度は2021年度までに比べて、効率的に実験できる見込みである。2021年度までに、解析に必要な実験系はほぼ確立されているため、これら実験系を用いて、鉄欠乏が光合成に与える影響を速やかに解析を進める。
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Causes of Carryover |
2021年度末に当研究室所有の遠心分離機の調子が悪くなり、修理を検討したが、結果的に簡易調整で対処でき、修理費用が必要なくなり、次年度使用額が生じた。2022年度は鉄欠乏下の細胞から、光化学系標品を単離するために、高価な界面活性剤を購入する必要があり、その試薬代などにあてたい。遠心分離機が再度不調になった際には、修理費用にあてる可能性がある。
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