2021 Fiscal Year Research-status Report
アブラナ科植物の自家不和合性における受容体活性化機構の解明
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20K05824
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村瀬 浩司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50467693)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自家不和合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の多くは自己の花粉を拒絶して、非自己の花粉により受精する自家不和合性と呼ばれる機構をもつ。アブラナ科植物の自家不和合性ではSと呼ばれる一遺伝子座の多数のハプロタイプにより制御されており、花粉側と雌蕊側のもつハプロタイプが一致するとその花粉は拒絶される。アブラナ科の自家不和合性においてはS遺伝子座にコードされる自家不和合性の決定因子として、雌蕊側は受容体型キナーゼSRKが、花粉側はそのリガンドであるSP11が同定されているが、リガンドを受容したSRKがどのように活性化してその情報を細胞内に伝達しているかは不明である。本研究では構造生物学的なアプローチから、SRKの活性化メカニズムの解明を目指す。 本年度は前年度に最適化されたSRKキナーゼドメインの発現と結晶化を行った。SRKの506から823アミノ酸の領域についてGST融合タンパク質として大腸菌で発現して、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて精製した。得られた精製タンパク質は5 mg/mLの濃度まで濃縮して0.1 mMのATPアナログであるAMP-PNPを加えたのち、384条件で結晶化スクリーニングを行ったところ、3条件で結晶が観察された。また、キナーゼドメインのA-loopにある2か所のリン酸化されるスレオニンをアラニンに置換した不活性型のタンパク質についても、同じ領域を用いて同様に発現・精製を行い、結晶化スクリーニングに供したところ10条件で結晶が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の新型コロナの蔓延に伴う大学の閉鎖の影響により、全体的に計画がやや遅れているが、本年度は発現に最適化したコンストラクトを用いて、SRKキナーゼドメインの活性型、不活性型について大腸菌を用いたタンパク質の大量発現とクロマトグラフィーによる3段階の精製を行い、およそ95%程度の精製度で各タンパク質を得ることができた。一方で、ゲルろ過クロマトグラフィーによる精製過程では活性型、不活性型共に2量体と思われるピークも観察され、タンパク質が単量体と2量体の混合物であることが示唆された。また、結晶化スクリーニングにより、活性型、不活性型共に結晶を得ることができたが、X線照射による回折データの観察までは行うことができなかった。来年度は結晶化条件の最適化を行い回折データの収集を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在結晶化を進めているSRKキナーゼドメインの活性型、不活性型について結晶化条件の最適化を行い、回折データを収集できるような結晶の作製を行う。それらの結晶を用いて大型放射光施設Spring-8で回折データを収集する。これらのコンストラクトで構造が決定できない場合は構造予測ソフトウェアのAlphaFoldを用いて立体構造の予測を行い、コンストラクト改良の情報を取得する。得られた情報をもとにコンストラクトの改良を行い、同様にしてタンパク質の発現・精製および結晶化を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度のコロナ過による大学閉鎖に伴い、本年度に約100万円を繰り越した。本年度は本年度予算すべてと繰越金のおおむね半分を使用して遅延分を取り戻したが、まだ本来の予定までは追いついていない。そのため、遅延分(繰り越し金額の約半分)を翌年度に繰り越して使用する予定である。
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