2021 Fiscal Year Research-status Report
異なる反応性を持つフラボノイドC-配糖化酵素の反応メカニズムの解明
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20K05825
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田口 悟朗 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (70252070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 亮一 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (50344023)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | C-配糖化酵素 / フラボノイド-C-配糖体 / 酵素反応機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
C-配糖体はフラボノイドなどの芳香環に糖が直接炭素-炭素結合した化合物群である。その結合のため、糖の結合が化学的に安定で酸やグルコシダーゼによる加水分解を受けず、種々の生物活性を示すことから注目されている有用な化合物である。その化学合成は容易ではないため酵素を活用した合成が期待されているが、生合成に関わるC-配糖化酵素の解析は他の配糖化酵素と比べて進んでいない。本研究では、反応性の異なる植物のC-配糖化酵素がそれぞれ炭素―炭素結合を形成する仕組みを明らかにし、その比較から「C-配糖化反応」が起こる要因を解析するとともに、O-配糖化酵素とC-配糖化酵素の活性変換を行うことなどにより有用なC-配糖体の生物合成に応用することを目指している。 本年度は昨年度に引き続き、既知の配糖化酵素の立体構造を元に作成したワサビのC-配糖化酵素WjGT1のホモロジーモデルを利用して、活性中心付近に存在すると考えられたアミノ酸残基に変異導入するとともに、WjGT1と配列の類似性が高いワサビのO-配糖化酵素と比較して変異導入し、それぞれの反応性を解析してC-配糖化活性とO-配糖化活性の違いを生み出すいくつかのアミノ酸残基を明らかにした。また、WjGT1酵素が当初の想定以上に不安定で、結晶化のために大量発現を行って濃縮すると変性して沈殿することが判明したことから、本研究の過程で作出したWjGT1変異体から安定なものを選定して検討を行い、結晶構造解析に必要な量のタンパク質を調整する条件を決定した。さらに、WjGT1を発現させた大腸菌を用い、フラボノイド6-C-配糖体を効率的に生産する系を作出し、有用なC-配糖体の生物合成へ応用する基礎を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ワサビのC-配糖化酵素WjGT1の結晶作成では酵素が不安定でタンパク質の調整に苦労したが、安定な変異体を用いることで、結晶作成に必要なタンパク質の大量調整を可能にした。また、ホモロジーモデリングに基づく点突然変異導入と酵素反応解析を先に進め、WjGT1のC-配糖化活性に関わるいくつかのアミノ酸残基を明らかにした。あわせて、WjGT1を利用してフラボノールC-配糖体を作出する系を確立するなど、ほぼ順調に研究を進めた。しかし、昨年度、新型コロナ対策で予定通りに実験を行うことができなかったことによる遅れを完全には取り戻せていないことから、上記のように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ワサビのWjGT1の解析については、おおむね当初の計画に従って研究を推進する。特に、結晶の作成とその構造解析を急いで進めるとともに、変異導入酵素の解析で明らかにしたC-配糖化活性に必要なアミノ酸残基がどのようにC-配糖化反応に関与しているのかを解析し、ソバのC-配糖化酵素など、反応性が異なる酵素による反応との相違点の比較を行う。 また、C-配糖化活性とO-配糖化活性の相互変換の可能性について、継続して検証する。
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Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナ感染対策で研究が若干遅れたこと、および、学会がオンライン開催となったため旅費として計画した分を使用できなかったことなどにより、予定より使用金額が少なくなった。
(使用計画) 次年度使用額は令和4年度に消耗品費と併せて使用する。
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Research Products
(4 results)