2020 Fiscal Year Research-status Report
ピロリン酸による植物の代謝制御とそれを応用した植物機能改変
Project/Area Number |
20K05826
|
Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
瀬上 紹嗣 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (00765935)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ピロリン酸 / 窒素 / 糖代謝 / デンプン / 液胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロリン酸(PPi)は、200以上の代謝反応から副産物として生産され、その蓄積は生物にとって毒となる。しかし、植物では比較的高い濃度が維持され、PPiを利用する複数の酵素がエネルギー源として利用している。本研究の目的はPPiが植物において代謝調節物質として機能することを立証し、またその操作によって植物改変に取り組むものである。 PPiの分解除去を行う酵素としては、単純なPPiの加水分解を行うsPPaseが様々な生物に存在するが、植物ではPPiの加水分解と共役してH+を液胞内に輸送するH+-PPaseの寄与がsPPaseよりも大きいことをこれまで明らかにしてきた。研究実施計画では、A:組織が求める代謝バランスに応じてH+-PPaseとsPPaseが配置され、PPi濃度が最適化されることを実証、B:環境条件などによりPPi生産の変動が起きた際に、H+-PPaseとsPPaseがそれぞれどれだけ対応できるかを検証、C:エネルギー源としてPPiがどれだけ利用可能であるかが、H+-PPaseが液胞内へ運ぶH+の量を決めることを証明する、という3つの主要なテーマを設定した。 初年度は計画時に想定のなかった研究代表者の異動に伴い、実験に必要な環境の整備を行い、必要な変異株の作製に取り組み、安定発現ラインの取得を完了した。また、若手Bから継続した研究成果について投稿を行い、無事に受理された。その内容は、液胞膜H+-PPaseの破壊株では窒素源として硝酸のみを含む培地で葉にPPi過剰蓄積を原因とする壊死が発生する、という現象をsPPaseとの多重破壊株を用いて詳細に解析した。植物細胞内ではこの2種類のPPaseのみがPPi分解において寡占的な位置を占めたが、窒素源の違いに関わらずsPPaseの発現が変化しなかったことから、培地のアンモニウム塩の有無によりPPiの生産が変動するモデルを提唱した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の通り研究代表者が異動となり、研究環境の再構築や新たな研究課題への従事、また新型コロナウイルスによる研究の中断や対応により、初年度中に本研究課題へ費やせる時間が大幅に減ってしまったため、当初予定していたよりも進捗は遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度では、課題A:根端コルメラではPPiが高めに維持されることで、糖の代謝が平衡石であるデンプンの蓄積・維持をするのに最適な状態に保たれるという仮説について、新たに整備した変異体を用い、表現型の更なる解析を進め、論文発表につなげる予定である。また、他の課題についても表現型から仮説の検証を行う。その一つとして、sPPaseの破壊によりH+-PPaseのH+輸送活性が増強することで、V-ATPase破壊による生育不全の表現型が緩和されるかを確かめる試験があり、そのための準備はほぼ整っている。 本年度は3年申請中の2年目だが、必要に応じて研究期間の延長を申請したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
研究代表者が異動となり、研究環境の再構築や新たな研究課題への従事、また新型コロナウイルスによる研究の中断や対応により、初年度中に本研究課題へ費やせる時間が大幅に減ってしまい、当初予定していたよりも計画の遂行に支障が出たため。研究の進展状況によっては繰越申請を考えているが、その際の研究予算として使用することも考慮しつつ、適正に執行していきたい。
|
Research Products
(2 results)