2021 Fiscal Year Research-status Report
担子菌の子実体誘導条件応答機構の解析とキノコ生産への効果的応用
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20K05828
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
渡邉 彰 香川大学, 農学部, 教授 (90325324)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 担子菌 / ラッカーゼ / 子実体形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、担子菌エノキタケを用いて、その子実体形成誘導条件応答機構について理解し、得られた成果の高効率なキノコ栽培への活用を目的としている。令和3年度は、主に以下の解析を行った。 (1)菌床培養系を用いたエノキタケの子実体形成過程では、子実体形成誘導条件(低温誘導:培養温度の低温への移行)の付与に応答して培地中のラッカーゼ活性が変動する。そこで、子実体形成誘導条件に応答するラッカーゼアイソザイムをカビを用いた異種宿主発現系から調製し、同アイソザイムのエノキタケの菌床培養系への添加効果等について検討を行った。現在、引き続きその与える影響について解析を実施している。また、前年度取得したエノキタケの子実体形成条件では検出されないラッカーゼアイソザイムについて、その酵素学的特徴の解析をさらに進めた。 (2)エノキタケの子実体形成誘導条件(低温誘導)の付与前後における菌体のRNA-Seq解析を行ったところ、低温誘導後の菌体においてハイドロフォービンと呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子において発現量の上昇が見られた。ハイドロフォービンは糸状菌の気中菌糸や子実体の形成などに関わることが考察されている低分子タンパク質であり、今回のRNA取得条件が、本解析において適していることが示唆された。また、その他の遺伝子に関しても調べたところ、タンパク質分解系に関わると推測される遺伝子オルソログにおいて発現量の上昇が認められた。このことを受け、検出された遺伝子産物の生長に及ぼす影響を調査するため、エノキタケ菌床培養系に対してタンパク質分解酵素阻害剤を添加し、現在、引き続きその解析を実施している。 (3)キノコ栽培の高効率化に向け、菌床培養系に用いる培地成分に着目し、それらが及ぼす影響について検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、調製した目的ラッカーゼアイソザイムや各種化合物の子実体形成過程に及ぼす影響(添加効果)を解析するため、菌床培養系(固体培養系)を使用している。そのため、固体培養系に対する添加方法や添加条件の検討、また子実体形成過程の観察に時間を要しており、計画よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
エノキタケの子実体形成誘導条件に応答するラッカーゼアイソザイムの特徴や同アイソザイムの子実体形成過程に与える影響について引き続き解析を進める。また、RNA-Seq解析の結果、着目した遺伝子オルソログ(タンパク質分解系に関わると推測)に関する検討ついては、タンパク質分解酵素阻害剤が及ぼす影響について引き続き解析を進めるとともに、当該遺伝子の発現機構にも焦点をあて、その分子生物学的解析も進める。また、その他の遺伝子についても調査を行い、菌糸体がどのように誘導応答して子実体形成に向かうのかを総合的に考察していく。加えて、得られた成果のキノコ栽培への還元についても合わせて取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
主な理由としては、子実体形成誘導条件に応答するラッカーゼアイソザイムやRNA-Seq解析から見出された各種遺伝子の機能を分子レベルで解析するために必要な試薬やキット類等を購入するため。また、今後の使用計画としては、前述の物品類の購入費に加え成果発表費に、次年度の予算とともに使用する予定である。
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Research Products
(4 results)