2020 Fiscal Year Research-status Report
新規な酵素群β-1,2-グルカン関連酵素の機能構造解析と基質調製への利用
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20K05830
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中島 将博 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 准教授 (60580727)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | β-1,2-グルカン / 糖転移活性 / β-グルコシダーゼ / 糖質加水分解酵素ファミリー |
Outline of Annual Research Achievements |
β-1,2-グルカンは天然の希少な糖鎖であり、これの合成や分解に関わる酵素についての知見は少ない。その中で申請者は細菌由来β-1,2-グルカナーゼ (SGL)の遺伝子同定に成功した。これにより、SGLをコードする遺伝子の遺伝子クラスターからβ-1,2-グルカン関連酵素を探索することが可能となった。その遺伝子クラスターにおいて、糖質加水分解酵素ファミリー(GH)35とGH1に属するホモログに着目し、その機能と構造を明らかにするとともに、これらを用いた糖転移活性の比色定量用基質の作成を目的としている。 GH1ホモログについては大腸菌を宿主として用いた発現系の構築、精製法の確立に成功した。さらに、精製酵素を用いてX線結晶構造解析のための一次スクリーニングを行い、結晶が観察された条件をもとに結晶化条件の最適化を行った。得られた結晶からは分解能2.2 オングストロームで回折データを取得することができ、分子置換法によりリガンドフリーの構造を明らかにした。また、この酵素はpNP糖の中ではpNP-β-グルコースを効率よく分解するが、pNP-β-ガラクトース、pNP-β-D-フコースに対しても分解活性を示すことを明らかにした。 GH35ホモログについてもGH1酵素と同様に大腸菌を宿主とした発現系の構築、精製法の確立に成功した。精製酵素の最適化した結晶化条件で2.0 オングストロームで回折データを得ることができた。さらに、セレノメチオニンを用いたSAD法により初期位相決定、最終的な立体構造の決定に成功した。また、この酵素が新規な活性(β-1,2-グルコオリゴ糖から配糖体への糖転移活性)を示すことを明らかにし、この酵素の基本的性質、反応速度論量を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定である両酵素の発現系の構築に成功し、機能についても酵素の性質を十分に理解する程度には明らかにできている。また、両酵素ともに立体構造の決定に成功していることから、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
GH1酵素については、基質特異性の決定、反応速度論量解析を行うと同時に、複合体構造の取得に取り組む。 GH35酵素については、複合体構造の取得を行うと同時に、この酵素を用いた比色定量用基質合成の第一段階の反応条件検討と必要に応じて反応生成物を精製する方法の検討を行う。
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