2022 Fiscal Year Research-status Report
植物のクチクラ形成を調節する乾燥応答ネットワークの解析
Project/Area Number |
20K05833
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
浦野 薫 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 契約研究員 (30391882)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環境ストレス応答 / 転写調節 / クチクラ形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナに存在するEDTFファミリー遺伝子の乾燥ストレス応答時の役割を明らかにするため、主要な役割を果たすことが予想されているEDTF1,2,3に加え、EDTF4,5,6遺伝子のクチクラ形成機構に関わる機能解析を行った。EDTF1,2,3のトリプル変異体(edtf-tri)を用いて、クチクラ形成に関与する遺伝子の発現変化とEDTF1,2,3による転写活性について解析した。クチクラ形成に関与するクチンとワックスの合成関連遺伝子やその調節に関与する転写因子遺伝子のedtf-triにおける発現を調べた。その結果、極長鎖脂肪酸合成に関与する遺伝子(KCS2)、アルカン合成遺伝子(CER1, CER1-like)、転写因子のSHN3の乾燥ストレスに応答した発現がedtf-triにおいて抑制されることが明らかになった。また、EDTF1,2,3がCER1とSHN3の転写を活性化することが明らかになった。一方、EDTF1,2,3,4,5,6の6重変異体(edtf-sex)をゲノム編集で作成し、その表現型と下流遺伝子の発現への影響を調べた。edtf-sexはクチクラの構造や乾燥ストレス耐性などedtf-triと比較して大きな違いは検出されず、6重変異体の相加的な効果は不明瞭であった。edtf-sexにおける、クチクラ合成関連遺伝子の発現は、一部の遺伝子の乾燥ストレス応答性に変化が生じていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
6個のEDTF遺伝子ファミリーを欠損した6重変異体中にGFP-EDTF1タンパク質を導入した植物を作成し、クロマチン免疫沈降解析や共免疫沈降解析を行い、EDTF1の結合領域の同定を試みたが、EDTF1が結合するプロモーター領域を同定することができなかった。植物中で作られるGFP-EDTF1タンパク質量が少ないこと、EDTF1タンパク質の活性が不安定であるこ、EDTF1が何らかの修飾をうけて分解されやすいことが原因と予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
EDTF1,2,3はタンパク質修飾を受けると予測される配列が存在することより、6重変異体に修飾サイトを欠損したGFP-EDTF1,2,3を導入した植物を作成した。今後はEDTF1タンパク質の安定化と下流因子の同定を試みる。さらに、前年度作成したクチン合成遺伝子CYP77A6プロモーター下でEDTFを発現させたシロイヌナズナを用いて、乾燥ストレス応答やクチクラ形成に関わる詳細な解析を行い、クチクラ強化の乾燥耐性への影響を評価し、作物への応用の可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
検討していた国際学会への参加を社会的状況を鑑みて自粛しため、旅費や参加費が執行されなかったことが次年度使用額が生じた理由と考えている。今年度も社会的な状況からオンライン学会の開催が予想される。旅費の執行額が少なくなる分、必要な設備備品費や消耗品費を充実させ、研究の効率化をはかりたいと考えている。
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