2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K05836
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大西 利幸 静岡大学, 農学部, 教授 (60542165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 純 静岡大学, 農学部, 准教授 (00776320)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 香気成分 / 配糖体 / 揮発性化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が,昆虫や鳥などの花粉媒介者が植物の花粉を運んで受粉させるためには,「開花」と「香りの発散」が逐次的に起こる必要がある。つまり,① 先ず花弁が展開し,雄しべや雌しべが露出し,② 次に花弁から香気が発散して、花粉媒介者が花弁に誘引され,雄しべや雌しべに到達できて,受粉が成立する。「開花」と「香気の発散」の順序が逆の場合,受粉は難しい。「開花」と「香気の発散」のそれぞれの分子メカニズムは明らかになりつつある。しかし、植物が「開花」と「香気の発散」の2つの生殖イベントを逐次的に制御する仕組みに関する知見はなく,またその分子メカニズムについては未解明のままある。 本研究課題の目的は,香気配糖体が「開花」と「香気の発散」を逐次的に制御するシグナル分子であると位置づけ,①香気配糖体が「いつ」,「どこで」生成・分解されるのか?②「どのように」開花を促進するのか?を分子レベル (生物有機化学的精密度) で解き明かすことである。生殖イベントにおける香気配糖体の生理学的意義を分子レベル (生物有機化学的精密度) で解き明かすことで,植物の生殖戦略に関する新しい概念を提案することを目指す。また本研究課題を通じて,植物の生殖イベントに注目し香気配糖体が「開花」と「香気の発散」を逐次的に制御するシグナル分子であることを実証し,植物の生殖システムを化学的側面から理解し深化させ,香気配糖体の生理学的意義を明らかにするブレークスルーにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,花弁展開において,香気配糖体が「いつ」,「どこで」,「どれくらい」貯蔵されているのか明らかにするために,各開花段階における花弁展開度と香気配糖体の内生量の定量化を行った。その結果,花弁の初期から後期にかけて,香気配糖体の内生量および香気成分の発散が上昇することを明らかにした。また花弁展開における著しく遺伝子発現が上昇する香気配糖化遺伝子のクローニングに成功し,大腸菌発現系を用いて異種発現をし,酵素画分を調整し,酵素活性試験を行った結果,クローニングした遺伝子は,揮発性化合物を配糖化する配糖化酵素遺伝子であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は 安定同位体ラベル化2PEGの化学合成を行う。 開花段階における2PEGの時間的・空間的貯蔵の仕組みを明らかにするために,安定同位体ラベルした2PEGを花弁に投与してラベル化された2PEGの定性・定量分析が必須である。そこで,アグリコン部を重水素でラベル化した2PEG (d8体) を化学合成する。既報の合成ルートを活用して,令和3年度内に合成を完了する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において,2020年4月から6月までの期間,実験ができなかったため,生化学実験および化学実験に使用する機器・試薬を次年度使用する予定である。
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Research Products
(2 results)