2020 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of hepatobiliary connection ex vivo
Project/Area Number |
20K05843
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
谷水 直樹 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00333386)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オルガノイド / 肝臓 / 上皮組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はマウス成体から分離した小型肝細胞(肝前駆細胞)と胆管上皮細胞の共培養を用いて、Ex vivoにおいて、肝細胞の毛細胆管と胆管の接続部(ヘリング管(Canal of Hering: CoH))を再構成することに成功した。我々の誘導したオルガノイドでは、肝細胞とチューブ状構造の胆管がCoHを介して接続していることから、Hepatobiliary tubular organoid (HBTO)と名付けた。肝組織形成のプロセスを明らかにするために、HBTOでのCoH形成過程を解析した。その結果、CoHは比較的早い時期に形成されており、その後に肝細胞間に形成される毛細胆管構造が発達することがわかった。HBTOを構成する肝細胞は、代謝活性を安定して保持していることから、肝疾患モデルの構築に取り組んだ。肝疾患で非常に重要な役割を果たす星細胞を導入するために、マウス初代星細胞およびヒトiPS細胞由来の星細胞を比較した。マウス星細胞の数が非常に限られていることから、iPS由来の星細胞を使用することとした。正常および傷害時の肝組織内での代謝産物の輸送などを明らかにするために、HBTOから肝細胞代謝産物を回収する方法の確立を試みている。タイト結合の阻害を低分子を用いて行うことができれば、簡便であり、可逆的な阻害が期待でいることから、クローディン阻害ペプチドの使用などを試みた。それらの化合物の使用では、期待した効果が得られなかったことから、今後、遺伝子の変異導入などの方法を用いて、HBTOからの代謝産物回収とその同定を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝オルガノイド誘導過程での組織構造形成プロセスを理解するために、経時的な解析を行った。マトリゲル重層後、1週間程度経過すると、すでに肝細胞―胆管の接続部(ヘリング管(Canal of Hering: CoH)が形成されており、その後、CoHの数が増加することはなかった。一方で、肝細胞間に形成される毛細胆管は、1週間後には断続的な構造であるが、4週間後には連続したネットワーク構造に変化していた。この結果は、CoHの形成は上皮形態形成の初期に形成され、その後、毛細胆管構造が発達することを示している。 マウスから星細胞を分離し、肝オルガノイドに導入した。マトリゲル重層後2週間の時点で、肝細胞の近傍に星細胞が存在していることを確認できた。しかしながら、マウスから得られる星細胞の数が非常に少ないために、病態モデル構築のためには細胞数を確保することが困難であると判断した。現在、共同研究先からヒトiPS細胞由来の星細胞を提供してもらい、肝オルガノイドへの導入を試みている。 胆管に輸送された代謝産物を同定するために、肝オルガノイドへのCPE-peptideの添加を行った。しかしながら、明確なタイト結合の阻害と胆管に輸送されたCLFの培地への放出を観察できなかった。またMbCDを添加すると、肝細胞の代謝産物がMbCDが形成する構造体に取り込まれるために、培養液中から検出される代謝産物の濃度が非常に低くなってしまうことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
CoH形成については、肝細胞側の胆管上皮細胞との相互作用に必要な性質を明らかにする。具体的には、小型肝細胞ではEカドヘリンの発現が高いことがわかったので、Eカドヘリン発現の重要性について解析する。 iPS由来の星細胞との共培養をさらに進め、肝細胞障害の添加によって、星細胞の活性化、コラーゲンの産生などの検出を試みる。 肝細胞代謝産物の胆管からの回収を可能にするために、胆管上皮細胞に変異を導入する。
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Causes of Carryover |
肝オルガノイドから肝細胞代謝産物の回収を可能にすることを目指している。令和2年度においては、MbCDによるタイト結合阻害によるオルガノイドからの肝細胞代謝産物回収の可否を確認することに時間を要した。そのため、当初、並行して進める予定であった胆管上皮細胞への変異導入実験を年度内に行うことができなかった。そこで、令和3年度において、ゲノム編集を用いた遺伝子破壊による胆管上皮細胞タイト結合の機能阻害を行う。Crispr/Cas9を使って、肝臓内では胆管特異的なタイト結合構成因子であるEzrinおよびClaudin4をノックアウトする。本実験に使用するアデノ随伴ウイルス作成用のベクター、ベクター構築用試薬、およびウイルス精製キットを購入する。
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