2020 Fiscal Year Research-status Report
バクテリアのゲノム情報に基づくラッソペプチドの異宿主生産
Project/Area Number |
20K05848
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小谷 真也 静岡大学, 農学部, 准教授 (20510621)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ラッソペプチド / 異宿主生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
中分子ペプチドの抗体と低分子の特徴を併せ持つ特性は、医薬への応用が期待される。特に細菌が産生するラッソペプチドは多様な構造を有す中分子環状ペプチドであり、プロテアーゼ耐性および抗菌活性等の生理活性を有することで創薬のターゲットとして注目されている。バクテリアゲノムにラッソペプチド生合成遺伝子クラスターは分布しているが、二次代謝産物であるため通常の培養で生産されるペプチドは少数である。本研究課題は、ゲノム情報に保存されている環状ペプチドの遺伝子クラスターを用いて、新規環状ペプチドの生産を行い、その生理活性を明らかにすることを目的とする。本年度は、プロテオバクテリアSphingomonas koreensisのペプチド生合成遺伝子クラスターのクローニングを行った。データベースから遺伝子クラスターの情報を得て、特異的なプライマーセットを設計し、PCR法を用いて、遺伝子クラスターの全長の増幅を行った。制限酵素で切断し、ライゲーションを行い、大腸菌用発現ベクターpET-41a(+)に組み込み、大腸菌Escheria coli BL21(DE3)をホストとして用いて、koreensinと命名した新規環状ペプチドの生産に成功した。ODSを用いたHPLC分取により、構造決定に必要なペプチドの分取を行った。培地の検討及び、培養条件の検討を行い、生産量の最適化を行うことができた。さらに、高分解能ESI-MSを用いて、分子式の決定を行った。またDQF-COSY, HMBC, HSQC, NOESYの各種2次元 NMRデータを解析することによって、化学構造の決定を行い、その構造を決定することに成功した。また、NOEデータに基づいて三次元立体構造の決定を行い、典型的なラッソ構造を有していることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
異宿主生産を行う場合、ペプチドの生産量が少ないことがネックとなるが、生産量の最適化を行うことで、構造決定に必要なペプチドの収量(1-5mg)が得られるようになった。そのため、比較的短時間で、培養及びペプチドの単離を行うことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、複数のバクテリアのクローニングに取り組んでいる。近年、人工合成遺伝子の価格が下がってきたことから、合成遺伝子で合成できるものに関して、人工合成遺伝子を用いてクローニングを行っている。また、大腸菌を用いた場合、ペプチド性の化合物は代謝されてしまうため、大量に生産することは難しいが、適宜、培地成分や培養温度の検討を行うことで問題を解決する予定である。
|
Causes of Carryover |
ペプチド生合成遺伝子の遺伝子クラスターは修飾酵素を含むため、比較的大きく(2000‐3000bp)、遺伝子クローニングに、コストがかかるが、予想以上にスムーズにクローニングが成功したため、試薬の量が少なく済んだ。また、異宿主生産を行う場合、ペプチドの生産量が少ないことがネックとなるが、生産量の最適化を行うことで、構造決定に必要なペプチドの収量(1-5mg)が得られるようになった。そのため、培養のためのコストが予想よりも少なくて済んだため。次年度は、さらにクローニングする標的の遺伝子クラスターを増やし、合成遺伝子も外注で発注し、より広範囲に遺伝子クラスターをスクリーニングするための費用に使用する予定である。
|