2020 Fiscal Year Research-status Report
糖鎖を介したタンパク質架橋反応のリアルタイム観察とリガンド創出への新アプローチ
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20K05855
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
尾形 慎 福島大学, 食農学類, 准教授 (10532666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若松 孝 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 教授 (80220838)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糖鎖クラスター / レクチン / ウイルス / 架橋 / 凝集 / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、糖鎖を介した生物学的反応プロセスのモデルとして知られている、糖鎖と糖認識タンパク質(レクチン)間の架橋形成に伴う形態変化をターゲットにしている。これまでの研究では、糖鎖リガンドとレクチンとの架橋形成の評価は、架橋複合体の形成前後における状態観察に留まり、架橋反応をリアルタイムで分析することが難しいため、糖鎖レクチン架橋反応プロセスの全容は従来、不明のままであった。 令和2年度は、溶解状態から形成されるタンパク質凝集体に対して高感度である低角度の前方光散乱の瞬時計測装置(時間分解F-LS測定装置)のセットアップと装置の操作性の改良を行った。さらに、我々がデザイン合成した中分子糖鎖リガンドとニホンニワトコ由来のシアル酸認識レクチン(ニホンニワトコレクチン、SSA)間の架橋反応プロセスを時間分解F-LS測定装置で評価した。結果、リガンドの架橋反応によって形成される複合凝集体の数やサイズが増加するだけでなく、これらの凝集体はより密な構造となり、最終的には架橋反応が平衡状態になることが判明した。また、両者の濃度比を固定し(SSAとリガンドの比、2:1)濃度を変化させて、測定した時間分解F-LSパターンから、架橋反応複合体のフラクタル次元Dを評価したところ、低濃度では比較的疎な複合構造体(D = 1.8)が形成された。低濃度では、近接作用で生じる架橋反応凝集よりも、むしろ拡散凝集が支配的であり、そのため疎な複合凝集体が形成されたと解釈できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度に予定していた、凝集体分析装置(時間分解F-LS測定装置)のセットアップおよび装置の操作性の改良、時間分解F-LS測定装置を用いた四価シアロ糖鎖リガンドとSSAとの凝集反応評価を実施した。さらに、中分子糖鎖クラスターを用いたレクチンおよびウイルスの架橋反応解析に関する事前データに関して、ACS OmegaやBioscience Biotechnology and Biochemistryに投稿し受理されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に使用している中分子糖鎖リガンドは、その構造が3つ(骨格部・糖鎖部・スペーサー部)に分割され、パーツごとに構造改変が可能なように設計されている。よって、令和3年度は四価シアロ糖鎖リガンドとSSAとの時間分解F-LS測定情報を指標とした活性と構造の相関から、パーツごとの機能設計を推進する。これにより、架橋速度や凝集体の密度構造を飛躍的に向上させた中分子糖鎖リガンドの創出を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 令和2年度に予定していた研究が予定通り進行したため、次年度の研究に充てることにした。 (使用計画) 令和3年度に予定している分析機器の改良に関する物品購入費等に充てる。
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Research Products
(8 results)