未利用微生物からのゲノムマイニング法による新規化合物の探索

2022 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 20K05859
• Research Institution: Kitasato University
• Principal Investigator: 上岡 麗子 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (30592365)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 天然物化学

Outline of Annual Research Achievements

天然資源からの新規化合物の探索は、新たな医薬リード化合物を発見する上で非常に重要である。これまで、生理活性を指標とした新規天然化合物の探索が活発に行われてきたが、近年においては、長い年月をかけ単離・構造決定した後に既知化合物であると判明するケースが頻発している。本研究では、NCBIで公開されている細菌のゲノム情報を活用し、ゲノム中に存在する二次代謝産物生合成遺伝子を解析することで、既知化合物の生合成遺伝子との相同性が低い遺伝子を持ち、天然物化学の分野で未利用な細菌を対象に新規化合物の探索を行った。特に、近年発見された新たなI型ポリケチド生合成遺伝子(PKS)であるtrans-AT PKSを含む細菌を優先的に選抜した。それらの細菌について、ゲノムマイニング法により生産されうる化合物の構造を推定し、新規性が高いと予想されるものについて、細菌を各種条件で培養し、高分解能LCMSを用いて代謝物の解析を行った。その結果、韓国のGwangyang湾で単離された海洋細菌Kordiimonas gwangyangensisからtrans-AT PKS由来の化合物の推定構造と分子量・組成の近い化合物の生産が確認され、LCMSのイオンピークを指標に精製を行った結果、新規化合物を単離することが出来た。本化合物は非常に不安定であり、通常の精製方法では分解してしまうため、精製法の確立に困難をきわめたが、HPLCの条件と乾固法を工夫することで精製法を確立することが出来た。また、ドイツの泥炭地から単離された細菌Rouxiella badensisの培養液抽出物からは、炭素鎖部分にシクロプロパン環を有する新規lysophospholipidを単離した。