2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the toxic reduction mechanism by chemical reaction of methylglyoxal with polyamine under the biocondition
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20K05862
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
筒井 歩 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (90531731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 充 明星大学, 理工学部, 教授 (40315750)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポリアミン / メチルグリオキサール / カルボニルストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ポリアミンとメチルグリオキサールとの化学反応が細胞ストレスの毒性軽減に寄与していることを証明しようとするものである。メチルグリオキサールはグルコースの代謝産物としても知られており、細胞に対するカルボニルストレス物質の一つである。 2020年度(令和2年度)では両者の反応によって生じるカルボキシエチル骨格を有するポリアミン誘導体を細胞内物資として同定した。 2021年度(令和3年度)では新たに、両者の反応によって生成すると推定されたラクトイル骨格を有するポリアミンの新規誘導体を細胞内物質の解析のための標品として合成し、LC/MS/MSを用いた解析により新規細胞内物質としての同定にも成功した。さらに本反応は元々、カルボキシエチル化合物と同様にリジンとメチルグリオキサールとの糖化反応機構に基づく類縁反応として捉えていたが、テトラヒドロピりミジン骨格を有する化合物をラクトイル型ポリアミン誘導体の反応中間体として同定できたことから、ラクトイル型ポリアミン誘導体の生成については、糖化様反応とは異なるポリアミン特異的な反応機構である可能性を見出した。テトラヒドロミリミジン骨格を反応中間体とする反応機構の解明については、第40回日本糖質学会年会(鹿児島)で発表した。さらに本研究では、各種ポリアミン誘導体について昨年度から分子間相互作用がLC/MS/MS測定に影響を与えることが問題となっていたが、その相互作用についてNMRで詳細解析を行い、環太平洋国際化学会議2022(Honolulu、オンライン開催)で報告した。さらに本研究でのLC/MS/MS解析については、測定条件の更なる検討を行い、定量分析にも適用できる安定的な測定条件を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、ポリアミン(スペルミン、スペルミジン、プトレシン)が生体内で化学反応をすることで、カルボニルストレス物質などのスカベンジャーとしての役割を果たしていることを明らかにすることである。現在、ターゲットとしているカルボニルストレス物質のメチルグリオキサールと、ポリアミンとの反応で生じる化合物の構造は多岐に渡ると考えられる。本研究では初年度の2020年度にカルボキシエチル骨格を有するスペルミンおよびスペルミジン誘導体を細胞内物質として同定するに至った。さらに2021年度には新たにラクトイル骨格を有するスペルミジン誘導体を細胞内物質として同定した。またラクトイル型のポリアミン誘導体の生成においては、反応系中でテトラヒドロピリミジン骨格を有する反応中間体を経由する経路を見出した。 細胞内のメチルグリオキサール増加の要因としては、糖尿病などによる血中グルコース量の増加や、細胞酸化ストレスの増大、グルタチオン量の低下などに伴うグリオキサラーゼⅠの活性低下などが明らかにされている。2022年度は、これまでに同定してきた誘導体が細胞内で増加する条件を明かにし、本研究課題の結果をまとめていくことを目標としている。 以上のことから本研究課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
メチルグリオキサールは細胞に対するカルボニルストレス物質として知られており、各種疾患との関連性が指摘されている。メチルグリオキサールは細胞内酵素であるグギリオキサラーゼによって乳酸に分解されることが分かっている。またグリオキサラーゼは細胞内トリペプチドであるグルタチオンによって活性化されることも分かっている。本研究でこれまでに特定したメチルグリオキサールとポリミアンとの反応物(カルボキシエチルポリミアンやライクトイルポリミアン)は、内在性のメチルグリオキサールが過剰な条件下で生成量が増加すると考えらえることから、今後は生合成経路内のグリオキサラーゼやグルタチオンの活性低下状態を再現し、実際にこれまでに特定してきた化合物の増加量を検証していく予定である。本実験によってグリオキサラーゼやグルタチオンの活性低下とポリアミン誘導体の生成量との相関が明らかになれば、これら化合物がグリオキサラーゼやグルタチオンの細胞内活性を検定する指標となることが期待される。さらにメチルグリオキサール増加条件下でのポリアミン添加によるメチルグリオキサール量の低下効果も調べていく。ポリミアンの添加によって細胞内のメチルグリオキサール量が低下すれば、本研究課題の目標であるポリアミンの生体内化学反応によるスカベンジャーとしての機能メカニズムの解明に繋がる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の世界的な感染拡大によって、2020年度開催予定だった国際学会(Pacifichem,ホノルル)が2021年12月に開催されたが、全面オンライン開催となったため、ハワイまでの渡航費が不要となった。また鹿児島で開催された第40回日本糖質学会年会も、コロナの学内規定の関係で現地入りできずにオンラインで参加したため、旅費が不要だった。以上の理由から今年度予算の一部が次年度繰越となった。 現在すでにロシア_ウクライナ情勢の悪化、円安などの影響から、すでに試薬、溶媒、ガス、燃料などの消耗品経費の高騰が著しい状態にあるため、繰り越し分はそれらの調整費として使用していく予定である。また現在の社会状況から考えると2022年度は多くの国内学会が現地開催となることが予想されることから、これまで発表を見送っていた一部の内容に関しても、現地入りしての発表を予定している。
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Research Products
(2 results)