2021 Fiscal Year Research-status Report
Structural elucidation of endogenous digitalis-like factor using theoretical calculation and chemical synthesis
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20K05863
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
中崎 敦夫 岩手大学, 理工学部, 教授 (00366428)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 19-ノルブファリン / 強心ステロイド / 2-ピロン / 化学合成 / MSスペクトル / 理論計算予測 / ジアステレオマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、様々な疾患の予防や治療という臨床医学的観点から重要な分子である内因性ジギタリス様物質(EDLF)の構造を、理論計算と合成化学を駆使して解明するものである。具体的には、白内障患者の水晶体から見出された19-ノルブファリン(19-NB)の完全な構造解明を最終目的として、i) MSスペクトルの理論計算予測に立脚した19-NBの立体異性体の絞り込み、およびii) 19-NBの合成法の確立と文献値との比較による提唱構造の検証、という2点について検討する。本年度は、19-NBの合成法の確立を目指し、1)ステロイド母骨格の安定供給、および2)17位の2-ピロンの構築法の開発、という2点を中心に検討した。 1)ステロイド母骨格の安定供給: 我々が独自に開発したエストロゲン様骨格構築法(J. Org. Chem. 2017, 82, 9097)を使って、19-NBのA環に関する全ジアステレオマーを合成可能な共通中間体の合成が、数百mg程度のスケールで安定して供給できるよう各反応の条件を最適化できた。 2)17位の2-ピロンの構築法の開発: 前年度開発したケイ素テザーを使ったアルケニルシランを中間体として使用し、そのモデル基質を用いて17位の2-ピロンの構築を検討したが、2-ピロンへの変換は困難なことが明らかとなった。現在、電子環状反応を使用した別法による2-ピロンの構築を検討中である。一方、同じ強心ステロイドに分類されるカルデノライドは17位にブテノライド(5員環ラクトン)を有するが、アルケニルシランからブテノライドへの変換には成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2-ピロンが種々の変換反応に対し予想以上に不安定であることが実際に化合物を取り扱ってわかってきたため、当初計画していた2-ピロンの合成法が困難であった。後述の別法により合成法開発を完遂する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
2-ピロンの合成では、現在、より温和な条件で進行する電子環状反応を利用する方法などを検討しており、これらのいずれかによって19-NBの合成を目指す。また、MSスペクトルの理論計算では、マッチングスコアの算出と計算手法の選択を検討し、実測値と計算値の比較を行う計画である。
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Causes of Carryover |
2021年度から新たに研究室を立ち上げたが、実験設備の準備に時間を要したため、当初予定していた実験量に満たなかった。そこで、消耗品費に充てる予定だった助成金を次年度に使用することとなった。翌年度分の消耗品費として使用する計画である。
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Research Products
(10 results)