2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of reactions based on trichloroacetimidate and synthetic studies of bioactive compounds
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20K05867
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
松島 芳隆 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (20282816)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トリクロロアセトイミダート / 窒素官能基の導入法 / タキソールの側鎖アミノ酸 / bis-イミダート / 分子内環化 / Cytoxazone / アミノアルコール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、トリクロロアセトイミダートを用いた種々の反応を検討し、天然物などの有用物質生産に応用する研究である。特に、光学活性体として合成可能な1,2-ジオールから誘導したbis-トリクロロアセトイミダート(bis-イミダート)の分子内環化反応について検討を行った。bis-イミダートの一方を求核剤、もう一方を脱離基としてはたらかせ、窒素官能基の導入を行う反応であり、アミノアルコールを構造中に有するさまざまな生物活性物質の合成に用いることができる。シンナミルアルコール(桂皮アルコール)から得られる光学活性ジオールを基質として用いたところ、選択性は中程度であるものの、高い収率で目的の分子内環化に成功した。その後の変換によってタキソールの側鎖アミノ酸の合成を達成した。本合成によって、基質の芳香環上の置換基(メトキシ基)の 有無によって、ベンジル位の反応性が大きく影響を受けることを明らかにした。芳香環上の置換基の影響については、さらなる検討を継続している。 また、当初の計画に示さなかった、トリクロロアセトイミダートの分子内SN2反応を用いたサイトキサゾンの合成についても研究を計画し、一定の結果を得つつある。これらについてもさらに実験を推進しサイトキサゾンの合成を完成させつつある。 このほか、トリクロロアセトイミダートの「分子内共役付加反応」を、除草活性を有するBacilosarcin Aを代表とするAmicoumacin類の側鎖アミノ酸の合成研究を行っている。安価に入手可能なD-グルコースから調製可能な化合物を光学活性出発原料として選択し、それから得られるイミダートに対し分子内共役付加反応を検討した。現在はAmicoumacin類の側鎖アミノ酸への変換を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トリクロロアセ トイミダート、特にbis-トリクロロアセトイミダート(bis-イミダート)の分子内環化反応については、タキソールの 側鎖アミノ酸の合成を達成し学術論文として発表し(Y. Matsushima, and M. Orita, Tetrahedron Letters 73 (2021) 153095. https://doi.org/10.1016/j.tetlet.2021.153095)、その後の芳香環上の置換基の効果に関する実験は未検討に課題も多いが、当初の計画に示さなかったトリクロロアセトイミダートの分子内SN2反応についても一定の結果を得ることができているなど、概ね当初の合成計画に従った研究が進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
bis-トリクロロアセトイミダート(bis-イミダート)の分子内環化反応を用いた、タキソールの側鎖アミノ酸の合成については学術論文に掲載することができた(Y. Matsushima, and M. Orita, Tetrahedron Letters 73 (2021) 153095. https://doi.org/10.1016/j.tetlet.2021.153095)。bis-イミダートの分子内環化反応については、概ね順調に進んでいるので、これまでの計画に準じて研究を推進する。芳香環上のメトキシ基の有無によって、ベンジル位の反応性が大きく影響を受けることを明らかにしたが、特に未検討の電子求引性置換基の影響について検討を継続し、未知なる反応性を探る予定である。また、当初の計画に示さなかった、トリクロロアセトイミダートの分子内SN2反応について検討し、サイトキサゾンの合成についても研究を計画し、一定の結果を得つつある。これらについても収率の向上など、サイトキサゾンの合成実現性の向上を目指して研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、昨年度に比較するとコロナウイルス感染症の影響が小さくなったが、夜間に実験できない時期がそれなりに生じた結果、ある程度の次年度使用額が生じた。これらは、最終年度の間、主に有機合成実験に使用する溶媒や試薬類などの消耗品や論文投稿のための英文校正などに充当する計画である。
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