2021 Fiscal Year Research-status Report
生体触媒による官能基変換をトリガーとするドミノ型不斉合成プロセスの開発
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20K05870
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
冨宿 賢一 明星大学, 理工学部, 准教授 (70392090)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生体触媒 / エナンチオ面選択性 / 不斉プロトン化 / 異性化 / 酸化 / 環化 / ドミノ反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
酵母の一種Ogataea polymorpha NBRC 1476が触媒するα-アンゲリカラクトンを光学活性なβ-アンゲリカラクトンに異性化する生体触媒反応について検討を進めた。微生物菌体反応と酵素反応の両面から、微生物菌体量や酵素量、基質濃度、後処理方法などを精査し、酵素反応としての反応条件を確立した。並行して、基質特異性を精査するために必要な、酵素反応の基質となるα,β-不飽和ブテノライドと生成物標品となるラセミ体のβ,γ-不飽和ブテノライドを、2通りの方法により各種合成した。4-オキソカルボン酸誘導体を環化する方法と、酸塩化物からアレン酸エステルを合成し、加水分解後に生じるカルボン酸を環化する方法である。合成した各種のα,β-不飽和ブテノライドを用いて、Ogataea polymorpha NBRC 1476を用いる生体触媒不斉異性化の基質特異性を精査した。その結果、この反応は各種の光学活性なα,β-不飽和ブテノライドの合成に有効であることが明らかになった。 生体触媒による第一級アルコールの酸化と、続く酵素内での立体選択的な環化が連続的に進行するドミノ型酸化‐不斉環化反応の開発に取り組んだ。前年度に基質として合成した第一級アルコールは、UV吸収を観測できるフェニル基をもつビシクロ[4.3.0]ノナン骨格の構築につながるものであったが、本年度は、生物活性天然有機化合物に数多く含まれるビシクロ[4.4.0]デカン骨格の構築を志向し、適切な炭素鎖と置換基を導入したアルコールを合成し、環化生成物の標品の合成に取り組んだ。次いでこれら基質の酸化を触媒する微生物の探索に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
α-アンゲリカラクトンを光学活性なβ-アンゲリカラクトンに異性化する微生物としてOgataea polymorpha NBRC 1476を選抜し、酵素反応条件を確立することができた。また、各種の基質と生成物の合成と、これら化合物の分析条件を確立し、基質特異性を検討することもできた。これらの結果、Ogataea polymorpha NBRC 1476を用いる生体触媒不斉異性化を利用して、各種の光学活性なα,β-不飽和ブテノライドの合成を達成することができた。また、各種の不飽和ブテノライドの合成を達成したことにより、ジエノールエステルを基質とする、生体触媒による加水分解とそれに伴うγ-位での不斉反応の検討について、多様な基質で検討することが可能になった。 ドミノ型酸化‐不斉環化反応の検討については、微生物の選抜には至っていないが、複数の基質の合成を達成し、多様なアプローチでの微生物スクリーニングに取り組む素地を形成できており、次年度以降の大きな進展を期待できる。 これらの結果から、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
Ogataea polymorpha NBRC 1476を用いる生体触媒不斉異性化を利用して、mycenolide Aなど生物活性天然有機化合物の合成に展開する。並行して、この酵母からの酵素の精製と生化学的解析に取り組む。 各種の不飽和ブテノライドやそのジエノールエステルからの異性化を伴うエナンチオ面選択的な反応について、引き続き微生物や酵素をスクリーニングする。エナンチオ面選択性や基質特異性などの特性の異なる微生物や酵素を選抜する。 ドミノ型酸化‐不斉環化反応の開発に向け、微生物や酵素のスクリーニングを推進する。分光光度計やHPLCなどの分析系をより一層整備し、従来以上に実験と分析の速度を速めて検体数を増やせるようにする。これにより、遅れている微生物選抜が迅速に進むことを期待できる。 選抜した微生物からは、酵素の精製と酵素化学的な諸性質の解明に取り組む。最適な菌体培養条件と酵素精製方法を確立し、数十L単位で菌体を大量培養し、その菌体破砕液から酵素を精製する。精製した酵素を用い、酵素反応の至適pHや至適温度、pH安定性や温度安定性、基質特異性など酵素化学的な諸性質を精査する。
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