2021 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of pigments and astringent taste by non-enzymatic oxidationn in red wine
Project/Area Number |
20K05874
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
久本 雅嗣 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00377590)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ワイン / アントシアニン |
Outline of Annual Research Achievements |
赤ワインの品質の評価する上で色調は重要な要素であり,赤ワインの赤色はブドウ果皮に含まれるアントシアニンに由来している.アントシアニンは不安定な化合物であり、pHや亜硫酸などの影響によって色調が変化する。しかし、他の化合物と共有相互作用することによって、着色形態での安定化が起きることが知られている。代表的なものは、ワイン中のエタノールによって生成されるアセトアルデヒドと架橋反応で生じるアントシアニン誘導体である。また、昨年度の研究からアントシアニンは、ブドウ果汁中の主要な有機酸である酒石酸から生成されるグリオキシル酸とも架橋反応を起こし、アントシアニン誘導体を形成していると示唆された。そこで今年度はアセトアルデヒド及びグリオキシル酸との架橋反応によって生じるアントシアニン誘導体の色の評価と生成されたアントシアニン誘導体の安定性の評価を行なった。色の評価はCIELAB、UV-VISスペクトルによって測定した。色の安定性の評価は、生成したアントシアニン誘導体、アルデヒド無添加物溶液に亜硫酸添加、耐熱性の試験を行なった。その結果、アントシアニン溶液にアセトアルデヒドを添加すると色調が赤から紫に変化し、新たな化合物が生成し、どのpHの条件下でもより暗色化が見られた。また、アントシアニン溶液にグリオキシル酸を添加すると色調が変化し、新たな化合物が生成し、pH 4.0と高い条件の方がより濃色化が見られた。色の安定性の試験からこれらの生成したアントシアニン誘導体はアントシアニン溶液に比べて亜硫酸の耐性があり、熱への耐性もあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アントシアニンはpH条件によって色調が変化し、ワインで酸化防止剤として添加される亜硫酸によって無色化する。しかし、アントシアニンが他の化合物と反応して新たな誘導体を形成して着色形態での安定化が起きる。ブドウ果汁中に含まれる酒石酸の分解によって生じるグリオキシル酸はアルデヒド基を有しており、反応性が高いことから、グリオキシル酸架橋反応でアントシアニン誘導体を形成している可能性がある。初年度はアントシアニンに酒石酸、Fe2+を添加することでグリオキシル酸架橋アントシアニン二量体が形成し、その後重合化していくことが示唆された。さらに、このグリオキシル酸架橋反応で生成するアントシアニン誘導体は、アセトアルデヒド架橋反応で報告されているものと同じく、アントシアニンと比べてpH変化に対しても安定で、亜硫酸による影響を受けにくいことも示唆された。 今年度の実験において、ブドウ由来のアントシアニン抽出溶液にアセトアルデヒドを添加すると、色調が変化し、新たな化合物が生成していることが示唆された。アセトアルデヒドを添加するとどのpHの条件でも同様に暗色化が見られアセトアルデヒド無添加物溶液に比べ、高いpH条件下でも色の安定性があることがわかった。また、グリオキシル酸を添加するとどのpHの条件でも色調の変化が見られた。pHが高くなるにつれ、より濃色化が見られpH 4.0の条件下の方がより反応性が高いことがわかった。アセトアルデヒド誘導体溶液、グリオキシル酸誘導体溶液はアセトアルデヒド無添加物溶液、グリオキシル酸無添加物溶液に比べて亜硫酸による耐性があることが明らかになった。さらに、アセトアルデヒド誘導体溶液、グリオキシル酸誘導体溶液はグリオキシル酸無添加物溶液に比べ、熱による耐性があることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
アセトアルデヒドはワイン中に含まれるエタノールの酸化やSaccharomyces cerevisiae の酵母により生成される。このアセトアルデヒドはアントシアニンと反応することでアルデヒド架橋アントシアニン二量体を形成する。さらに、このアセトアルデヒド架橋反応で生成する誘導体はPolymeric pigmentになる初期の誘導体であると考えられており、二量体は反応が進むにつれてさらに重合化していく。一方、ブドウ果汁中において主要な有機酸である酒石酸は、水溶液中において遷移金属の存在下で容易に分解される。その分解経路の一つであるフェントン反応によって、グリオキシル酸が生成する。このグリオキシル酸はアルデヒド基を持ち、反応性が高い。 本年度はpH 2.8-4.0の条件での実験を行なったが、今後はより高pHでの条件でアントシアニン誘導体の生成を行なっていく必要がある。また、アセトアルデヒド、グリオキシル酸を添加することによるアントシアニン誘導体の安全性の観点から直接添加するのではなく、エタノールを添加し酸化させることによってアセトアルデヒドを生成したり、酒石酸を添加して反応させることによってグリオキシル酸を生成したり、間接的に添加する方法でより実現的なアントシアニン誘導体の生成することを調べていく必要がある。さらに、より高いpH条件下でのアントシアニン誘導体の形成や安全性の観点からアルデヒド類を間接的に添加させ、アントシアニン誘導体を生成する方法を考える必要がある。また、高分子色素重合体の詳細な生成機構やその化学構造と渋味との相関、さらにその呈味の質の評価については未だ不明な点が多く、その生産技術も存在しない。今後は高分子色素重合体を利用した新しい食品素材として展開するための基盤となる研究を行う。
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