2022 Fiscal Year Research-status Report
セサモールによるアポトーシス誘導(抗がん作用)における構造活性相関の機能解明
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20K05880
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
藤村 務 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70245778)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セサモール / セサモール誘導体 / アポトーシス誘導 / 細胞増殖抑制 / 抗がん作用 / 構造活性相間 / 酸化還元活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
機能性表示食品の概念が提唱されて以来、世界的に健康食品が開発され、その利用度が高まっている。最近、ゴマに含まれるゴマリグナン類は抗酸化作用など生理活性物質として注目されているが、科学的根拠に基づいた機能解明については不明な点が多い。ゴマリグナン類の中でもセサモールがK562細胞(K562)およびドキソルビシン薬剤耐性K562細胞 (K562/DOX)に対して最も強いアポトーシス誘導(抗がん作用)を示した。更なるセサモールの機能解明の為に、セサモールによるアポトーシス誘導に構造活性相関があるかセサモール誘導体(S1, S2, S3)を合成し検討した。その結果、セサモール誘導体3(S3)はK562細胞あるいはK562/DOX細胞に対してアポトーシス誘導を示した。注目すべき点はK562/DOX細胞に対してもS3はセサモールよりも強いアポトーシス誘導を示し、Cleaved PARP、Cleaved Caspase3及びがん抑制遺伝子の一つとしても知られるp53の存在も確認できた。これらのことから、細胞増殖抑制作用機構としてアポトーシス誘導のシグナル伝達が起こったと考えられる。様々な官能基を持つ誘導体を合成しアポトーシス誘導による細胞増殖抑制作用を検討したがS3が最も強い作用を示した。更に、セサモール及びS3によるアポトーシス誘導に共通して増減する複数のタンパク質をLCMS/MSにより同定した。同定したタンパク質のウエスタンブロットを行った結果、細胞死の増加と共にシグナルの増強が確認できた。次に不死化ヒト肝細胞を用いてセサモール及びS3処理の細胞毒性評価を評価した。未処理群と比較して細胞死や形態的変化などは確認されず、セサモール及びS3によるアポトーシス誘導はがん細胞に対し作用することが分かった。今後はマウスを用いたin vivo 実験を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在まで、私はK562細胞あるいはK562/DOX細胞を用いてセサモールおよびセサモール誘導体のアポトーシス誘導(抗がん作用)に着目し、構造活性相関におけるアポトーシス誘導(抗がん作用)の機能解明を①タンパク質の網羅的な解析をLC MS/MSを用いて行った。その結果、セサモール及びS3によるアポトーシス誘導に共通して増減する複数のタンパク質を同定、定量した。同定、定量したタンパク質が相互作用しているか免疫沈降法を用いて評価し相互作用していることが確認できた。②セサモール誘導体の合成と評価:-OH、-NH2基以外の官能基を持つセサモール誘導体を有機化学合成し抗酸化作用の評価を酸化還元活性を利用する電気化学検出法(サイクリックボルタンメトリー)により評価した。S3(-NH2)>>セサモール(-OH)>S2(-OCH3)=S1(官能基無)の順で酸化還元活性が有り、アポトーシス誘導の結果と一致していた。新規誘導体の合成を行い、細胞増殖抑制作用及びアポトーシス誘導関連タンパク質をウエスタンブロットで確認した。その結果、S3より強い活性を示す新規誘導体はなかった。③セサモール及びS3処理の毒性評価を不死化ヒト肝細胞を用いて行った。未処理群と比較して細胞死や形態的変化などは見られなかった。④in vivo 評価の解析:セサモールおよびS3処理による担がんマウスへの延命効果や健常マウスへの影響(副作用など)を調べた。担がんマウスを作製後、セサモールおよびS3を腹腔内投与に投与し延命効果(抗腫瘍効果)を検討した。対照群(生理食塩水投与)と比較したが、有意差が認められなかった。このことから、投与方法の検討が必要となり、マウスから血清を回収し、解糖系、TCAサイクル、核酸代謝、尿素サイクル、脂肪酸代謝などの検討が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの知見を踏まえて今後、次のことを明らかにする①タンパク質の網羅的な解析(結果から、タンパク質の相互作用の強さをSPR法により検討する。②追加の毒性評価の解析:毒性評価は、正常細胞としてラット由来の胸腺細胞を使用する。→ ラット(オス、8-12 weeks、Wistar)から取り出した胸腺細胞を用いてプロピディウム染色によるフローサイトメーター法により測定し、細胞致死率と細胞シュリンク率により評価する。更に幹細胞以外の不死化ヒト細胞を用いてセサモール及びS3処理の細胞毒性評価を評価する。 ④in vivo 評価の解析:担がんマウスを作製後、セサモールおよびS3を腹腔内投与に投与し延命効果(抗腫瘍効果)を検討した。対照群(生理食塩水投与)と比較したが、有意差が認められなかった。このことから、投与方法の検討が必要となった。セサモールあるいはS3のドラッグデリバリーシステムを用いてがん組織に特異的に集まる様に検討する。また、がん組織の化合物濃度および血中濃度も測定し抗がん作用があるか確認する。効果が認められたら担がんマウスから血清を回収し、解糖系、TCAサイクル、核酸代謝、尿素サイクル、脂肪酸代謝などを対照群(生理食塩水投与)比較して測定する。また、同時に健常マウスへの影響(副作用など)も調べる。
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Causes of Carryover |
本研究を申請するにあたり計上した研究費については、消耗品を主体とした 費が大部分を占める。in vivo 評価の解析が進んでおらず、予定していたウエスタンブロット法、免疫沈降法、ELISA法の入荷が遅れており予定していた試薬が届いていない(未使用分が残っている)。また、毒性の評価に繰り越し研究費を充てる。(使用計画)今年度は注文済みの入荷が遅れているアポトーシス誘導に関連する分子(タンパク質)を、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、ELISA法などにより相互作用を解析する。複数の不死化ヒト細胞を用いて毒性の評価も進め、in vivo 評価の為の化合物のドラッグデリバリーシステムを構築する。 その為、関連する消耗品費代がかなり必要になることから令4年度未使用分の160万円+令和5年度分70万円、計230万円(直接費)を計上する。
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[Journal Article] Electrochemical polymerization of nitroxyl radical precursor containing phenol side chain in aqueous solution and its application to electrochemical analysis of glucose2022
Author(s)
Katsuhiko Sato, Masayuki Kumano, Kyoko Sugiyama, Sachiko Komatsu, Kazuhiro Watanabe, Ryota Imahashi , Tetsuya Ono , Kentaro Yoshida , Takenori Dairaku , Tsutomu Fujimura, Yoshitomo Kashiwagi
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Journal Title
Bunseki Kagaku
Volume: 71
Pages: 191-196
DOI
Peer Reviewed
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