2023 Fiscal Year Research-status Report
セサモールによるアポトーシス誘導(抗がん作用)における構造活性相関の機能解明
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20K05880
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
藤村 務 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70245778)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | セサモール / セサモール誘導体 / アポトーシス誘導 / 細胞増殖抑制 / 抗がん作用 / 構造活性相間 / 酸化還元活性 / 生体内代謝物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゴマに含まれるゴマリグナン類は抗酸化作用など生理活性物質として注目されているが、科学的根拠に基づいた機能解明については不明な点が多い。ゴマリグナン類の中でもセサモールがK562細胞(K562 )およびドキソルビシン薬剤耐性K562細胞 ( K562/DOX )に対して最も強いアポトーシス誘導(抗がん作用)を示しことを見つけた。セサモールによるアポトーシス誘導に構造活性相関があるかセサモール誘導体(S1, S2, S3)を合成し検討した。その結果、セサモール誘導体3(S3)はK562細胞あるいはK562/DOX細胞に対してアポトーシス誘導を示した。注目すべき点はK562/DOX細胞に対してもS3はセサモールよりも強いアポトーシス誘導を示し、Cleaved PARP、Cleaved Caspase3及びがん抑制遺伝子の一つとしても知られるp53の存在も確認できた。様々な官能基を持つ誘導体を合成しアポトーシス誘導による細胞増殖抑制作用を検討したがS3が最も強い作用を示した。マウスを用いたin vivo実験により、セサモールおよびセサモール誘導体処理により担がんマウスの延命効果が認められる傾向にあった。また、健常マウスへの影響(体重減少などの副作用)は見られなかった。担がんマウスあるいはセサモールおよびセサモール誘導体処理による担がんマウスから血清を回収し、解糖系、TCAサイクル、核酸代謝、尿素サイクル、脂肪酸代謝など代謝物質を測定した。その結果、担がんマウスと比較してセサモールおよびセサモール誘導体処理による担がんマウス、特に解糖系及びTCAサイクルにおいて健常マウスまで回復傾向にあった。更に、がんに関与する生命維持活動に必要な代謝物質との関係性も明らかにする必要が課題として残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在まで、私はK562細胞あるいはK562/DOX細胞を用いてセサモールおよびセサモール誘導体のアポトーシス誘導(抗がん作用)に着目し、構造活性相関におけるアポトーシス誘導(抗がん作用)の機能解明を行った。①タンパク質の網羅的な解析をLC MS/MSを用いて行った。その結果、セサモール及びS3によるアポトーシス誘導に共通して増減する複数のタンパク質を同定、定量した。②セサモール誘導体の合成と評価:-OH、-NH2基以外の官能基を持つセサモール誘導体を合成し抗酸化作用の評価電気化学検出法により評価した。S3(-NH2)>>セサモール(-OH)>S2(-OCH3)=S1(官能基無)の順で酸化還元活性が有り、アポトーシス誘導の結果と一致していた。③セサモール及びS3処理の毒性評価を不死化ヒト肝細胞を用いて行った。未処理群と比較して細胞死や形態的変化などは見られなかった。④in vivo 評価の解析:セサモールおよびS3処理による担がんマウスへの延命効果や健常マウスへの影響(副作用など)を調べた。昨年、担がんマウスを作製後、セサモールおよびS3を腹腔内投与に投与し延命効果(抗腫瘍効果)を検討した。対照群(生理食塩水投与)と比較したが、有意差が認められなかった。今年度は投与計画(投与容量、投与回数、投与間隔等)を見直した。その結果投与群において延命の傾向が見られた。マウスから血清を回収し、解糖系、TCAサイクル、核酸代謝、尿素サイクル、脂肪酸代謝などの代謝物を測定した。解糖系およびTCAサイクルにおいて健常マウスまで回復傾向にあった。しかしながら、がんに関与する生命維持活動に必要な代謝物質との関係性が不明瞭であったため、明らかにする必要が課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた研究計画が当初の予定よりもやや遅れている。研究に必要な試薬などの入荷やin vivo 評価の実験が予定通りに進まなかった等が遅れの要因であった(分子間相互作用を測定する消耗品、in vivo実験の計画の見直し等)。今後、次のことを明らかにする①タンパク質の網羅的な解析(結果から、タンパク質の相互作用の強さをSPR法により検討する。②追加の毒性評価の解析:毒性評価は、正常細胞としてラット由来の胸腺細胞を使用する。→ ラット(オス、8-12 weeks、Wistar)から取り出した胸腺細胞を用いてプロピディウム染色によるフローサイトメーター法により測定し、細胞致死率と細胞シュリンク率により評価する。更に幹細胞以外の不死化ヒト細胞を用いてセサモール及びS3処理の細胞毒性評価を評価する。③in vivo 評価の解析:担がんマウスを作製後、セサモールおよびS3を腹腔内投与に投与しドラッグデリバリーシステムを用いてがん組織に特異的に集まる様に検討する。また、がん組織の化合物濃度および血中濃度も測定し抗がん作用があるか確認する。効果が認められたら担がんマウスから血清を回収し、解糖系、TCAサイクル、核酸代謝、尿素サイクル、脂肪酸代謝などを対照群(生理食塩水投与)と比較して測定する。また、同時に健常マウスへの影響(副作用など)も調べる。以上の結果を用いてがん細胞に対するセサモールおよびセサモール誘導体の構造活性相関におけるアポトーシス誘導(がん細胞増殖抑制)の機能解明を行う。
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Causes of Carryover |
本研究を申請するに たり計上した研究費については、消耗品を主体とした 費が大部分を占める。in vivo 評価の解析が進んでおらず、予定していたウエスタンブロット法(抗体)、免疫沈降法(抗体)、ELISA法(抗体)、特にSRR(分子間相互作用)測定関連試薬は輸入品の為、欠品が長引いており入荷が遅れて、予定していた試薬が届いていない(未使用分が残っている)。また、毒性の評価に繰り越し研究費を充て る。複数の不死化ヒト細胞を用いて毒性の評価も進め、in vivo 評価の為の化合物のドラッグデリバリーシステムを構築する。その為、関連する消耗品費代がかなり必要になることから令5年度未使用分の約200万円を計上する。
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[Journal Article] Biochemical characterization of mitochondria from adult worms and plerocercoid larvae of Spirometra mansoni shows mixed populations of anaerobic and aerobic mitochondria.2023
Author(s)
Takamiya S, Nakamura T, Tsubokawa D, Tsuji N, Fukuda K, Yamasaki H, Fujimura T, Taka H, Kaga N, Kobayashi-Tanabe M, Matsuda M, Mita T.
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Journal Title
Parasitol Int.
Volume: 92
Pages: 102695
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Electrochemical reactions of highly active nitroxyl radicals with thiol compounds.2023
Author(s)
Kumano M, Sugiyama K, Sato F, Komatsu S, Watanabe K, Ono T, Yoshida K, Sasano Y, Iwabuchi Y, Fujimura T, Kashiwagi Y, Sato K.
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Journal Title
Anal Sci.
Volume: 39
Pages: 369-374
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Determination of antibiotics by amperometry using nortropine N-oxyl, a highly active nitroxyl radical.2023
Author(s)
Ono T, Sato F, Kumano M, Komatsu S, Sugiyama K, Watanabe K, Yoshida K, Sasano Y, Fujimura T, Iwabuchi Y, Kashiwagi Y, Sato K.
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Journal Title
Anal Sci.
Volume: 39
Pages: 1771-1775
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] .Doxorubicin耐性細胞に対するセサミン代謝物(7α,7α,8α,8α)-3,4-methylenedioxy-7,9:7,9-diepoxylignane-3,4-diol( SC1)の効果2023
Author(s)
蓬田 伸, 渡邉 一弘, 染谷 明正a, 數野 彩子, 上野 隆, 三浦 芳樹, 菅野 秀一, 大河原 雄一, 藤村 務
Organizer
第96回日本生化学会大会
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