2020 Fiscal Year Research-status Report
体内吸収性マイクロプラスチックの健康リスク:食品成分との相互作用を含めた検討
Project/Area Number |
20K05884
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Research Institution | Toyama College |
Principal Investigator |
竹内 弘幸 富山短期大学, その他部局等, 教授 (80551689)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 安全性 / マイクロプラスチック / 動物実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ラットを用い、①微小マイクロプラスチックの吸収および蓄積性、②体内に蓄積されたマイクロプラスチックの健康リスク、③食品成分との相互作用についても検討を行い、最終的にはマイクロプラスチックの吸収を抑制しうる食事組成や機能性成分を見出すことを予定している。 今年度は、リンパカニュレーション法を用いて、微小マイクロプラスチックの吸収について検討を行った。続いて、蛍光標識したマイクロプラスチックを継続的に投与し、肝臓、腎臓および脳への蓄積について蛍光顕微鏡を用いて調べた。さらに、血清脂質濃度に対する影響についても検討を行った。 ラットに1μmの蛍光プラスチックビーズを単回経口投与した後、腸管リンパ液を採取した。採取したリンパ液を蛍光顕微鏡にて観察したが、蛍光ビーズは観察されなかった。以上のことから、1μm程度の微小なプラスチックは、リンパ管を通しては、ほとんど吸収されないことが判明した。 ラットに4週間、1μmの蛍光プラスチックビーズを添加した粉末飼料を投与し、肝臓、腎臓、脳を採取した。採取した臓器は、透明化試薬を用いて透明化した後、蛍光顕微鏡にて観察したが、マイクロプラスチックは観察されなかった。血液分析の結果からは、肝障害マーカーの有意な上昇は認められなかった。血中脂質への悪影響も観察されなかった。 以上の結果から1μmのマイクロプラスチックをラットに4週間摂取しても、肝臓や脳への蓄積性はほとんどなく、肝機能及び血清脂質濃度に対して大きな悪影響を及ぼさないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では2020~2021年度にかけては、以下の二つについて検討する予定であった。 1.腸管リンパ管のカニュレーションによりリンパ液を採取し、パイエル板から吸収されるマイクロプラスチックの吸収率や各臓器への蓄積性を粒径別(0.1~1μm)に測定する。 2.蛍光標識したマイクロプラスチックを投与したラットの腸管(特にパイエル板)、肝臓、腎臓、脳等の臓器を臓器透明化技術(CUBIC)により透明化したのち、3Dイメージ化が可能な光シート蛍光顕微鏡を用いて蓄積した蛍光マイクロプラスチックの吸収や蓄積状態を3次元的に可視化する。 1.については1μmのプラスチックについては検討が終了することができた。 2.については、マイクロプラスチックをラットに投与し、臓器を透明化することについては終了することができた。しかしながら、蛍光顕微鏡での二次元的な観察で、蛍光ラベルされたマイクロプラスチックが観察されなかったことから、より小さなマイクロプラスチックビーズでの検討が必要であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予想していたよりもマイクロプラスチックビーズの吸収および蓄積性が低いことから、研究方針を若干修正する必要が生じた。吸収性については、より小さなマイクロプラスチックをより多量に投与した検討を中心に行う予定である。蛍光マイクロプラスチックの吸収や蓄積状態を3次元的に可視化するすることは、十分な臓器蓄積性が確認された後に行う予定である。
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