2021 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患の改善が期待できるヒトGBA誘導によるオートファジーの活性化の研究
Project/Area Number |
20K05885
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Research Institution | Oyama National College of Technology |
Principal Investigator |
笹沼 いづみ (佐々木いづみ) 小山工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (70270220)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | β-グルコシダーゼ / オートファジー / 神経変性疾患 / β-配糖体 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度で得られた配糖体化合物でβ-グルコシダーゼ(GBA)を誘導する化合物について、オートファジーの機能に与える影響を評価した。また、ゴーシェ病(GBA活性が低いために起こる疾患)患者から分離された細胞(理化学研究所から入手可能)を用い、配糖体化合物のオートファジーに与える影響を評価した。ステロイド及びカプサイシンでは、GBA活性はiPS細胞ではジオスシンで細胞内外の酵素活性が上昇し、神経誘導iPS細胞ではコリアジャポニンで細胞内酵素の活性が上昇した。オートリソソーム形成活性はiPS細胞ではコリアジャポニン、ラパマイシン、カプサイシンで高く、神経誘導iPS細胞ではジオスゲニン、ジオスシン、カプサイシン、コリアジャポニンの順で活性が高い。ゴーシェ病由来iPS細胞(GD iPS細胞)では、ジオスシン、カプサイシン、ラパマイシン、コリアジャポニン、ジオスゲニンの順でオートリソソーム形成活性が高く、神経誘導GD iPS細胞ではコリアジャポニン、カプサイシン、ジオスシン、ジオスゲニン、ラパマイシンの順で高かった。GBA活性はGDiPS細胞ではカプサイシン、コリアジャポニンで細胞内の酵素活性が上昇し、神経誘導GDiPS細胞ではジオスシン、コリアジャポニン、ラパマイシンで細胞内酵素、ジオスシン、ラパマイシン、コリアジャポニンで細胞外の活性が上昇した。このように神経に誘導では、正常なiPS細胞とGDiPS細胞でコリアジャポニンによるオートリソソーム形成活性と細胞内GBA誘導性が高く、この値はオートファジー誘導物質であるラパマイシンより高いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度で得られた配糖体化合物で最もGBAを誘導する化合物について、オートファジーの機能に与える影響を評価するのが令和3年度の予定である。細胞は神経誘導iPS細胞、グリオブラストーマ(神経の癌細胞)、ゴーシェ病(GBA活性が低いために起こる疾患)患者から分離された細胞(理化学研究所から入手可能)を用い、配糖体化合物のオートファジーに与える影響を評価する計画である。これらを全て完了し、さらにラパマイシンとの比較もできた。また、用いた化合物の構造から関与する受容体の推定ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までにGBAの活性を高めたものは、ステロイド配糖体とイソフラボン配糖体であることが明らかになった。これらがGBA活性を誘導した理由としては以下の2つの仮説が考えられる。1つ目は細胞膜上の受容体に作用する場合で2つ目はエンドサイトーシスなどで細胞内に取り込まれ分子シャペロンとして作用する場合である。ほとんどのステロイド受容体は細胞の核に位置しているが、さまざまなステロイド受容体の小さなサブセット(約5%)が原形質膜に局在している。さらに、選択的に膜局在化するステロイドホルモンの受容体が存在し、原形質膜の細胞シグナル伝達機構と相互作用して膜での開始応答を促進する。ジオスゲニンの受容体の1, 25D3-膜結合型迅速応答ステロイド結合タンパク質(1,25D3-membrane-associated, rapid response steroid-binding protein;1,25D3-MARRS)は、細胞増殖、分化、アポトーシスに関与する20)。1,25D3-MARRSのリガンドである1,25-ジヒドロキシビタミンD3(活性型ビタミンD)はGBAの遺伝子であるklothoの発現を上昇させる。また、GBAは小胞体を通過する際に、本酵素と可逆的に相互作用する低分子化合物があると立体構造を安定化させ、早期分解を防ぎ、リソソームコンパートメントへ正しく輸送されることが報告されている。GBAの認識部位はコリアジャポニンで2箇所、ジオスシンで1箇所あることから、これら化合物はGBAのシャペロンとなる可能性がある。平成4年度からは細胞表面のステロイド受容体とシャペロン効果について検討を行う。
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