2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on properties and utilization of granular size-classified starches of the sweetpotato low temperature gelatinizing starch
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20K05892
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
北原 兼文 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (30240922)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サツマイモ澱粉 / 低温糊化澱粉 / 分級澱粉 / 分子構造 / 物理化学特性 / 澱粉利用 / 不均一性 / 生育期間 |
Outline of Annual Research Achievements |
低温糊化澱粉を有する「こなみずき」塊根について、生育期間120日の小塊根(平均塊根重118.6 g)及び180日の成熟塊根(同358.5 g)から澱粉を調製した。昨年度の市販低温糊化澱粉を用いた研究において、大粒子と中粒子は物理化学特性が類似したことから、今回は、大粒子(大及び中粒子)と小粒子の2画分とした。調製した澱粉粒の平均粒径は、小塊根の分級前で18.1μm、大粒子で19.7μm、小塊根で8.6μmであり、成熟塊根の分級前で19.7μm、大粒子で21.3μm、小粒子で8.2μmであった。RVA粘度特性では小塊根と成熟塊根の小粒子がいずれも低い最高粘度と高い最終粘度を示し、DSC糊化曲線ではいずれの小粒子も糊化吸熱ピークがブロード化することが認められ、これらは昨年の市販澱粉の結果と一致した。澱粉の分子構造において、アミロース含量は両塊根の小粒子で高く、また成熟塊根の方が高かった。一方、アミロペクチンを構成する極短鎖や超長鎖などの鎖長分布は類似しており、市販澱粉の粒子間で見出された分子構造の相違は認められなかった。2%糊液の白濁速度や9%ゲルの弾性率は、塊根間で有意な差はなかったが、小粒子は高アミロース性に起因して老化しやすいことが分かった。以上のように、小粒子における高アミロース性は再確認できたが、アミロペクチンの分子構造の相違は生育期間の異なる塊根間や粒子間で小さく、これは様々な圃場から集約された原料の市販澱粉と異なり、栽培環境条件が整った圃場では澱粉特性がより安定化されるものと考察した。さらに、昨年より継続している主成分の中粒子画分の食品利用特性では、9%ゲルをクリープメーターで調べた結果、分級前に比べて、中粒子は初期弾性率と破断前弾性率の比から求めたコシ感や破断歪率が高く、モチモチ感と歯切れの良いプリッと感を有する特有のゲルを形成することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年は、新型コロナウイルス感染防止のため、研究活動が制約を受けたが、機動的に分析試料を市販低温糊化澱粉に変更することにより、その分級澱粉の基本的な物理化学特性を明らかにすることができた。加えて、近年南九州地域で猛威を振るっているサツマイモ基腐病禍においても鹿児島県農業開発総合センターと連携を取り、栽培管理の整った条件下における健全な小塊根及び成熟塊根を確保して、本年の研究は円滑に着手することができた。 その結果、小粒子の分級澱粉はアミロース含量が高いなどの昨年の結果を再現する一方、生育期間が2ヶ月異なるにもかかわらず、それらの塊根の分級澱粉特性は比較的類似することが明らかになった。当初、生育期間の異なる塊根から得られる澱粉は、生育環境の相違による影響を受けると考えていたが、栽培環境条件が整った圃場では澱粉特性が安定化することが示唆された。別のサツマイモ品種では、マルチ被覆栽培により生育環境の影響が抑制される結果も得られており、澱粉特性の不均一性とその変動抑制に関する新たな知見を得ることができた。また、昨年に加えて、主成分の中粒子澱粉の9%ゲルは、特有のゲル物性を持つことも明らかにした。 以上のように、研究対象を市販澱粉から自製澱粉に換えて、その澱粉特性を明らかにしたことから、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果により、サツマイモ低温糊化澱粉の分級澱粉では、小粒子に分子構造の特徴が見出され、それに起因した物理化学特性の相違が認められた。低温糊化澱粉の粒径は、分級前が約20μmであるのに対して、小粒子は約8μmであったが、小粒子澱粉の特徴を解明するため、更に粒径の小さい微細粒子の調製を試みる。微細粒子の調製方法には、水中沈降速度の相違またはグリセロール水溶液中における低速遠心分離により行う。澱粉の物理化学特性及び分子構造特性は本研究課題の常法に従い、加えて研究計画にあげた酸処理澱粉の構造特性を明らかにすることにより粒内の結晶構造に関する知見を得る。一方、中粒子澱粉の食品利用特性についても引き続き解析を加える。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、予定していた学会参加がオンライン開催となったため、旅費の支出がなかった。昨年度末に、本研究で多用する必須機器のラピッドビスコアナライザーが故障し、その修理費が想定外の支出となったが、昨年度の繰越と本年の物品費及び研究室経費との合算で対応した。また、購入予定であった分析カラムの消耗品を次年度購入としたため、若干の次年度使用額が生じた。次年度の使用計画は、本研究課題で酷使した消耗品等を更新する予定である。
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