2020 Fiscal Year Research-status Report
国際的整合性を満たした食品衛生検査の技能試験に利用可能なボツリヌス菌標準株の開発
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20K05904
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
山崎 栄樹 帯広畜産大学, 動物・食品検査診断センター, 准教授 (40514708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茅野 光範 帯広畜産大学, 畜産学部, 講師 (20590095)
奥村 香世 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (70415561)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 標準試験法 / 食品からの微生物標準試験法検討委員会 / ボツリヌス菌 / Probability of Detection / コラボスタディ / 妥当性確認 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)本研究では、ボツリヌス標準試験法の妥当性および無毒化ボツリヌス株の適合性評価を目的として、複数の試験機関による併行試験(コラボスタディ)を計画している。本年度の研究においては、地方衛生研究所および大学から研究協力の承諾を得て、4つの試験所から構成されるコラボスタディ組織の構築を完了した(2020年度中にオンライン会議およびメール会議を1回ずつ実施済み)。 2)本研究では、定性試験において特定の菌量を接種した際に陽性の結果が得られる確率を統計的に示した値であるProbability of Detection (POD)を採用した精度管理方法の構築を目的の一つとしている。本年度の研究では標準ボツリヌス菌株を用いて、PODが50%になるスパイク菌量であるLOD50の算出を行った。ボツリヌス食中毒において最も重要な食品であるはちみつをマトリクスとして様々な菌量のボツリヌスA型菌標準株(62A株)を接種した後、「食品からの微生物標準試験法検討委員会」にて作成された国内ボツリヌス標準試験法案(ステージ2)に従ってボツリヌス毒素の検出を行った。その結果、シングルラボスタディの結果として、LOD50 = -0.34 log10 CFU/25gはちみつ試料(95%信頼区間の上限値 = 0.26, 下限値 = -0.92)という値が得られた。 3)本年度の研究で得られた成果について第72回(2020年12月23日)および第72回(2021年3月11日)食品からの微生物標準試験法検討委員会において報告し、専門家からの意見徴収を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究においては、ボツリヌス菌取扱い経験が豊富な国内の試験所を選定し、本研究の趣旨をご理解頂いた上で、本研究遂行に不可欠であるコラボスタディ組織の構築を完了している。コラボスタディ参加機関とは密な連絡体制を構築しており、来年度以降のスムーズなコラボスタディ実施が可能となっている。 本研究で構築する無毒化ボツリヌス標準菌株を評価する際のリファレンスとして利用する目的で、ボツリヌス標準菌株を用いた際のLOD50の算出を行った。次年度以降に無毒化ボツリヌス標準菌株を利用して得られた結果を、本年度に得られた結果と比較検証することでボツリヌス標準菌株の妥当性について適切な検討が可能となる。 これらの成果はISO(国際標準化機構)により示される、試験法等の妥当性確認を行う上で不可欠なスキームとして提唱されており、国際的整合性を踏まえた試験法構築を目的としている本研究において不可欠なものである。本年度に構築した試験組織および、獲得した基礎データを基に、次年度以降のスムーズな研究推進が可能になったものと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降の研究においては、本年度までに構築したコラボスタディ組織の協力を得て、複数の試験所より得られた結果に基づいたボツリヌス標準菌株を用いた際のLOD50を算出する。一方で無毒化ボツリヌス標準菌株の作成を行い、同株を用いたシングルラボスタディおよびコラボスタディにおける無毒化ボツリヌス標準菌株のLOD50を算出する。これらの結果の同等性検証においては、ISO 16140 Part 2: Protocol for the validation of alternative (proprietary) methods against a reference methodに示されたスキームを使用し、国際的に評価可能な試験結果の提示を行う。 研究成果については「食品からの微生物標準試験法検討委員会」において報告し、国内の食品衛生行政等にかかわる専門家の意見を取り入れながら、今後の研究計画をすすめる。
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Causes of Carryover |
10,000円以下の端数について来年度に繰り越して使用する予定である。
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