2020 Fiscal Year Research-status Report
果実の不溶性ポリフェノールの機能性評価とその形成を促進する加工法の検討
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20K05906
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
濱渦 康範 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (90283241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻田 佑 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (50738010)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 干柿 / 不溶性タンニン / 非抽出性プロアントシアニジン / 胆汁酸吸着・排泄 |
Outline of Annual Research Achievements |
干柿の不溶性プロアントシアニジン画分(以下,不溶性PA画分)はin vitroでの胆汁酸吸着活性が強いことが,先行研究でみとめられたことから,本研究では干柿の不溶性PAがin vivoにおいて実際に胆汁酸の吸着・排泄に寄与し,動脈硬化リスクを低減する可能性を検証する目的で,動物試験を実施した。 干柿の凍結乾燥粉末4%および干柿から抽出した不溶性PA画分1%を配合した高脂肪飼料でマウスを10週間飼育し,3回の採糞と最終日に採血を行った。糞便中の胆汁酸を90%エタノールで抽出し,キット試薬で定量した。血漿サンプルについて,総コレステロール,HDL-コレステロールおよびトリグリセリドを測定し,また,酸化型LDL濃度も調査した。また,比較のため,配合飼料に使用した干柿粉末と不溶性PA画分の各検体について,in vitro胆汁酸吸着活性も調べた。 その結果,干柿乾燥粉末4%または不溶性PA画分1%を配合した高脂肪食を摂取したマウス群の胆汁酸排泄量は,通常食あるいは高脂肪食摂取群の排泄量よりも有意に多く,特に干柿粉末配合飼料の方が排泄効果が高かった。検体摂取量1g当りの排泄量に換算すると,不溶性PA画分が干柿粉末よりも多かった。これは,in vitroの吸着活性の比較でも同様の傾向であった。検体摂取の他の影響として,体重は高脂肪食群よりもやや高く,不溶性PA画分配合飼料摂取群では有意に増加した。また,血漿コレステロールの低下はみとめられなかったが,動脈硬化指数が全ての群で約1.4と低かった。酸化LDLとトリグリセリド濃度は検体摂取群で若干低い傾向がみとめられた。以上のことから,血漿脂質への影響は確認できなかったものの,干柿および不溶性PA画分には強い胆汁酸吸着・排泄作用があることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の令和2年度の主目的は,in vitroにおいて認められていた干柿不溶性プロアントシアニジン画分の胆汁酸吸着活性が動物試験においても確かに有効であるといえるかどうかを検証することであった。その部分は動物の給餌試験から生体試料確保,ならびに排泄胆汁酸量の測定,血漿脂質性状の測定,検体のin vitro活性の測定など全て順調に終えることができた。ただ,糞便を使用した腸内細菌叢の解析が実施できず,凍結保存してある試料により引き続き実施する予定である。このため,「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は,初年度に干柿試料を使用した不溶性PA画分の有用性を動物試験レベルで確認した上で,その後は不溶性PAの形成やin vitroでの活性などを果実の種類を変えつつ幅広く展開させようとしている。2年目にはプロアントシアニジンを豊富に含むカリンやマルメロ果実を主体に,加工利用を念頭に置いた処理を行い,可溶性プロアントシアニジンの不溶化に及ぼす影響を調べることを中心とする。すなわち,果実の均質化(果汁加工などに伴う組織破砕),加熱加工・調理や乾燥加工の各種の条件を変更しつつ,不溶性プロアントシアニジンの形成量を高める加工条件を見出す計画である。さらに,形成された不溶性プロアントシアニジンの量と,その画分が有する胆汁酸吸着活性の関係性を確認し,干柿同様の胆汁酸吸着効果がみとめられるかを確認する。なお,初年度に実施した動物実験で採取した生体試料について,残された分析項目を並行して行うこととしている。また,3年目にかけては,果実の繊維成分(セルロース,ペクチンなど)と単離したプロアントシアニジンを使用したモデル試験を行い,不溶性プロアントシアニジンの形成メカニズムを追究する予定である。
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Causes of Carryover |
腸内細菌叢の解析について,共同研究先の事情により先延ばしせざるを得ない状況となったことから,当初計画していた年度に実施することが出来なかった。このため,当該予算を次年度使用額とし,共同研究者の回復後に引き続き計画を遂行できるように考えている。試料は凍結保存されており,今後の使用が可能である。 なお,発生した次年度使用額については,そのまま初年度に予定していた計画通り,腸内細菌叢解析に関わる消耗品として使用する予定である。
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