2021 Fiscal Year Research-status Report
果実の不溶性ポリフェノールの機能性評価とその形成を促進する加工法の検討
Project/Area Number |
20K05906
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
濱渦 康範 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (90283241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻田 佑 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (50738010) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 果実 / 熱風乾燥 / 搾汁 / 果肉ペースト / 非抽出性ポリフェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
乾燥,加熱,均質化などの加工処理が果実のプロアントシアニジンの不溶化に及ぼす影響を調査した。(1) マルメロ果実の熱風乾燥に伴う非抽出性プロアントシアニジン (NEPA) 形成量を調べたところ,マルメロ果肉切片を60℃および50℃で乾燥させた際,乾燥終盤にNEPAの顕著な増大がみとめられた。また,このとき,特に60℃でアスコルビン酸が減少し,過酸化水素の増大が認められ,何らかの関連性が示唆された。全ての乾燥温度においてポリフェノールの濃縮が認められたが,40℃ではアスコルビン酸が比較的多く残存し,NEPAは高温乾燥区で特に多いなど,乾燥温度による抗酸化物質の組成が異なることがみとめられた。 (2) カキ,マルメロおよびカリンの果汁調整に関連した均質化処理の影響を調査したところ,各果実において単純な均質化処理のみでNEPAが形成されることが示された。このことは,果汁調製時に多くの可溶性プロアントシアニジンが固形残渣中に失われることを示唆するものであった。マルメロ果実においてはブランチング処理がNEPA形成を低減させたことから,酵素反応がNEPA形成に関わったことが示唆された。しかし,カキ果実やカリン果実においてはブランチング処理はむしろNEPA形成を促進し,果実品目によって形成条件が異なることが示された。 (3) マルメロ果肉ペースト加工によるNEPA形成量の変化を調べたところ,加工前の果実の繊維画分よりも加工後の繊維画分においてNEPA含有量が多くなり,長時間加熱加工によるNEPA形成の促進が示唆された。また,NEPAが多くなった乾燥後や加熱調理後のマルメロ繊維画分は,in vitroにおける胆汁酸吸着活性が強くなることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は,カキ果実で認められた不溶性プロアントシアニジンの形成がその他のプロアントシアニジン含有果実類の加工時にもみとめられるか,また,いかなる条件下で形成が促進されるかを調べ,そのことが繊維画分の機能性を増強させるかを調べるものであった。概ねこの計画に沿って実施でき,いくつかの加工処理による不溶性プロアントシアニジン形成条件が確認でき,また,細胞壁繊維と結合したプロアントシアニジンを含む画分の機能性として胆汁酸吸着活性の向上がみとめられることを示した。 また,初年度に実施できなかった動物試験の糞便の解析を専門の研究者の協力のもと手掛けることができ,より詳細な解析を2022年度(最終年度)に継続する。状況としては,各群の飼育終盤(64-66日目,14週齢)の糞便からDNAを抽出し,16S rRNA遺伝子のV3-V4領域をPCRにて増幅,illumina NovaSeq 6000でシークエンシングを行った。得られたデータは現在,細菌叢解析ツールであるQIIME2を用いて解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の試験で確認した数種果実の不溶性プロアントシアニジン形成条件に基づき,さらに条件を検討して形成量を増大させる可能性を探るとともに,その形成メカニズムと食品成分としての意義を追究することに主眼を置く。抽出した成分同士を異なる条件下で反応させるモデル実験を中心に,形成条件とメカニズムの検討を行い,条件を活かした果実加工を行いつつ,不溶性プロシアニジンを多く含む繊維画分の機能性を追究する。即ち,カリン果実から種々の重合度を含むプロシアニジンを抽出し、逆相カートリッジカラムで固相抽出することにより粗精製し,これを細胞壁繊維画分やその組成成分であるペクチンやセルロースなどと種々の加工条件(混合温度,時間,共存成分や酵素添加の影響など)で反応させ,効果的な結合条件を探索する。 また,初年度の動物試験の糞便における細菌叢の解析も継続し,2022年度は、2021年度に得られたデータから低脂肪食飼料(LF)摂取群あるいは高脂肪飼料(HF)摂取群と比較して、干柿の不溶性プロアントシアニジン画分配合飼料の摂取群あるいは干柿粉末配合飼料の摂取群で統計学的有意に増加あるいは減少した腸内細菌を抽出し,qPCRを用いて,飼育初期,中期および終盤における経日的変化を詳細に解析する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度の動物試験において得られた糞便の分析と解析を2年目に実施することとなり,腸内細菌叢の解析を行うためのDNA抽出と特定領域のシークェンシングを実施したが,この実験はより詳細な解析を次年度に継続して行うことが望ましく,若干の消耗品が必要となることから,この実験に割り当てた費用を一部繰り越すこととした。これ以外の請求額については,当初の計画通り,プロアントシアニジンと細胞壁繊維画分の結合モデル実験と機能性調査を中心とした実験に必要となる試薬,実験消耗品,分析機器補修,学会参加費,成果とりまとめと英文校閲等に使用する計画である。
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Research Products
(2 results)