2020 Fiscal Year Research-status Report
リン脂質とトコフェロールの親和性に基づいた乳化系油脂の酸化防止技術の開発
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20K05911
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
山本 幸弘 県立広島大学, 生物資源科学部, 准教授 (00549727)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酸化 / リン脂質 / エマルション / トコフェロール |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、これまでの研究において、いくつかの乳化剤の添加量や種類を調節することで、抗酸化剤の効果を向上できることを示した。しかし検討された乳化剤は、食用添加物ではあったが、ヒトの健康に対して必ずしも安全とは言い切れない[Bonoit et al., Nature, 2015]。本研究では、生体親和性の高い種々の天然型リン脂質を調製し、これを乳化剤として用い、トコフェロール(Toc)の乳化系における局在性をコントロールすることを主な目的とした。 まず、基準となる乳化系として、ダイズ由来ホスファチジルコリン(SoyPC)を乳化剤として使用したo/wエマルションを調製した。酸化基質(油相)は市販のキャノーラ油を用いた。なお、プローブ型超音波装置により、本乳化を行った。調製されたエマルションの粒子径は310 nmであり、30℃・暗所下、静置状態で少なくとも1週間安定であった。また、酸化基質であるキャノーラ油は、α-Toc、β-Toc、γ-Toc、δ-Tocをそれぞれ125 ppm、76 ppm、320 ppm、10 ppm含有していた。この試料を30℃・暗所のもと、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら酸化させた。経時的に油相を抽出し、酸化一次生成物であるヒドロペルオキシド量をDPPP試薬により定量したところ、経時的な酸化を確認した。また、Tocの減少率を調べると、α、β、γ、δの順で減少速度が大きかった。ChemDrawにより各Toc同族体のpKaを調べてみると、それぞれ10.159、9.923、9.923、9.686であり、Hの供与能自体はこの順と考えられた。従って、減少速度はδ、γ、β、αと予想されたが、実際は逆であり、減少速度の大きい順に油相-水相界面付近に存在しているものと考えられ、SoyPCにはそのような作用があると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は、リン脂質のアシル基の影響を明らかにすることを計画していた。この計画に対して、現在はSoyPCを用いた検討のみ行った状況であり、種々のアシル基を有するPCの調製とそれらを用いた評価ができていない。所属組織におけるCOVID-19蔓延防止対策により、研究活動における制限の影響が大きかったとみている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、アシル基の異なる種々のリン脂質を独自調製する予定であったが、進捗状況の遅れも鑑みて、試薬として購入し、評価することとする。2年目としては、もともと極性基の異なるリン脂質を調製して、それらを評価する計画だったが、状況に応じて購入も視野に入れる。その他の計画は当初通りとする。
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