2022 Fiscal Year Research-status Report
プロスタサイクリン欠乏が惹起する慢性腎臓病様血管障害の予防・改善へのアプローチ
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20K05915
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 知永子 神奈川工科大学, 健康医療科学部, 教授 (90200914)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロスタサイクリン / PGI2 / 腎障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年我が国では、糖尿病、肥満、高血圧など生活習慣病から動脈硬化そして慢性腎臓病に陥り、透析治療を余儀なくされる人が著しく増加しており、国民の健康維持を目指す上で大きな問題となっている。このような疾患の治療・予防としてエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3系多価不飽和脂肪酸の臨床的効果が数多く示されており、積極的な摂取が推奨され、食事栄養療法に取り入れられている。しかしながら、これらn-3系多価不飽和脂肪酸の作用機序の詳細はいまだ明らかではない。プロスタサイクリン(プロスタグランジン(PG)I2)は、n-6系必須多価不飽和脂肪酸のアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ経路によって産生され、新血管系の恒常性維持に重要な働きを担う生理活性物質である。我々が作成したPGI2合成酵素遺伝子改変マウスはPGI2を産生できず、加齢に伴い慢性腎臓病様の腎障害を発症するが、その発症機構は明らかではない。本研究では、PGI2欠乏が惹起する腎血管障害について解析し、① 腎および血管保護作用におけるPGI2とアディポサイトカインとの関連性、② PGI2欠乏による血管の恒常性維持低下がもたらす病態に対するn-3系多価不飽和脂肪酸の病態改善・予防効果について明らかにすることを目的とする。 本年度は、培養細胞を用いて検討した。脂肪細胞、血管内皮細胞、尿細管細胞の炎症惹起時におけるAA、EPA、DHAの影響を、関連遺伝子の発現レベルについて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍の影響等により動物を用いた研究を中止し、培養細胞を用いた研究に絞ることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
腎臓内の腎洞と呼ばれる腔は脂肪組織で満たされている部分である。そのため慢性腎臓病の発症に脂肪細胞と他の腎組織細胞間とのクロストークが関与している可能性が考えられる。これまでに成熟脂肪細胞に炎症刺激を与えた場合に誘導される遺伝子の発現レベルを調べ、n-6系多価不飽和脂肪酸のアラキドン酸(AA)存在下で培養した脂肪細胞とn-3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)存在下で培養した脂肪細胞で比較した結果、EPA処理細胞では有意に炎症マーカー遺伝子の発現低下が認められた。昨年度に引き続き、血管内皮細胞、尿細管由来細胞の炎症惹起時におけるAA、EPA、DHAの影響を、関連遺伝子の発現レベルについて検討する。さらにプロスタサイクリン存在下における影響も調べる。また、関連タンパク質の発現および代謝の相違についても検討する。
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Causes of Carryover |
試薬の使用期限等の理由から、購入を見送ったため。 主に試薬、細胞をはじめとする証文物品の購入ならびに情報収集のための旅費等に使用する。
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