2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on the inhibition of starch digestion by food procyanidins.
Project/Area Number |
20K05916
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Research Institution | Sanyo Gakuen Junior College |
Principal Investigator |
廣田 幸子 山陽学園短期大学, 健康栄養, 教授 (00312140)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロシアニジン / 澱粉消化 |
Outline of Annual Research Achievements |
米とアズキをともに炊飯すれば、炊きあがった飯は淡赤色になる。この淡赤色の飯には、アズキ種皮に含まれるフラボノイド類が結合している。そしてパンクレアチン依存のアズキ飯澱粉の消化は白飯よりも遅く、これはアズキに含まれるプロシアニジンおよび、その酸化産物が飯澱粉に強く結合したためであると推定した。米にはもち米、うるち米、および高アミロース米があり、それぞれの米のアミロースとアミロペクチンの比率は、およそ、0:10、2:8、3:7である。今年度の研究では、アズキのプロシアニジンがアミロースあるいはアミロペクチンのいずれの消化抑制に関与できるかを検討した。 クロマメも、米とともに炊飯することで、その飯は薄紫に着色する。これはクロマメに含まれている主なフラボノイド類であるエピカテキン、シアニジン 3-グルコシド (cyanidin 3-O-glucoside : C3G),プロシアニジンなどが炊き上がった飯に結合したためであると推定される。今年度の研究で、クロマメと共に炊飯して得られた米にC3Gが結合し、その結合によってアミロースの消化が抑えられやすいことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高アミロース米で調整したアズキ飯のパンクレチン依存の還元糖の生成速度は、その白飯より有意に小さく、もち米で調整したアズキ飯とその白飯との間では還元糖の生成速度に差はなかった。次に、パンクレアチンによる飯から遊離する澱粉についてヨードを用いて調べた。パンクレアチンによって560 nm付近に吸収ピークを、700 nm付近に肩を持つ澱粉が高アミロース白飯から遊離した。他方、パンクレアチン添加後にもち米白飯から遊離した澱粉では、800 nmから500 nm の波長領域に吸収ピークや肩は観察されなかった。これらの結果は、高アミロース白飯からは、アミロースを含む澱粉が遊離されることを示している。このアミロースの遊離速度は、高アミロース米のアズキ飯の方がその白飯より低かった。この低下は、アズキ成分が高アミロース米のアミロースに結合して、αーアミラーゼによるその加水分解を抑制したためであると推定した。続いて、試薬アミロースおよびアミロペクチンをアズキに含まれているプロシアニジンの一つであるプロシアニジンB2と共に加熱した。この加熱によってアミロースの消化は抑制されたが、アミロペクチンの消化は影響を受けなかった。この結果は、アズキのプロシアニジン類は、炊飯中に高アミロース米のアミロースと結合し、その消化を抑制できるという上の推定を支持した。 クロマメをもち米、うるち米、および高アミロース米と炊飯し、それぞれの飯に結合しているC3Gを調べた。その結果、C3Gはもち米よりも高アミロース米に結合しやすいことがわかった。パンクレアチンで処理によってそれぞれの飯から澱粉と結合しているC3Gが遊離し、その遊離速度はもち米<うるち米<高アミロース米の順で大きくなった。このことから、C3G/アミロース複合体の加水分解速度は、C3G/アミロペクチン複合体のそれより小さいと推定した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度のクロマメを用いた研究から、C3Gが飯アミロースに結合して、パンクレアチンによるその加水分解を抑制できることが明らかになった。クロマメには、C3G以外にプロシアニジン類が多く含まれている。アズキを用いた研究では、プロシアニジンがパンクレアチンによるアミロースの加水分解を抑制できることを示してきた。 今年度の研究目的の一つは、C3Gとプロシアニジンがアミロースの加水分解抑制に共同的に働くことができるかどうかを調べることである。この目的を達成するため、まず、もち粉および上新粉をクロマメ種皮の抽出液と共に加熱して、その抽出液の澱粉加水分解に対する影響を調べる。もし、その加水分解が抑制されれば、その抑制に対して二つの可能性が考えられる、即ち、(1)クロマメ成分によるαーアミラーゼ活性の抑制と(2)クロマメ成分と澱粉との結合による澱粉加水分解の抑制である。(1)の可能性を除外するため、クロマメ種皮抽出液と加熱したもち粉および上新粉をメタノールで沈殿させ、その沈殿物に含まれている澱粉の加水分解を調べ、また、その沈殿物にC3Gとプロシアニジンが結合しているかを調べる。この沈殿物の加水分解速度が小さければ、クロマメ種皮に含まれているC3Gとプロシアニジンがもち粉および上新粉の澱粉と結合してその加水分解を抑制できるかどうかが推定できる。 続いて、C3Gとプロシアニジンとの澱粉加水分解抑制に対する共同作用を試薬C3G、プロシアニジンB2、およびクロマメのプロシアニジン画分を用いて調べる。この目的を達成するために、これらの試薬ともち粉あるいは上新粉とを加熱したのち、メタノールを用いて沈殿させる。上記三種の試薬の組み合わせによって、澱粉加水分解速度に違いが現れると予測している。もし、C3Gとプロシアニジンが澱粉加水分解抑制に対し共同的に働けば、低消化性の澱粉を含む食品の開発につながる。
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Causes of Carryover |
2020年度に購入させて頂いたHPLC解析ソフトSPDが安く購入できた。また、研究は概ね予定通りに進めることは出来たが、コロナ感染拡大のため実験の遅延、学会が中止となった。2021年度は学会発表を行う予定である。
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Research Products
(2 results)