2020 Fiscal Year Research-status Report
The mechanisms whereby heat-killed lactic acid bacteria up-regulates gut-derived serotonin synthesis and promotes defecation
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20K05921
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
原 崇 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20323959)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / 排便促進 / セロトニン |
Outline of Annual Research Achievements |
乳酸菌は便通改善効果をもつことが広く知られているが、その効果の仕組みについては不明な点が多い。本研究課題では,乳酸菌の便通改善効果における腸管セロトニン(5-HT)の重要性について検討する。5-HTは、腸管神経細胞の5-HT受容体に作用して腸筋叢の蠕動運動を促す。R2年度の研究では、腸管5-HT産生を阻害された状態と下痢止め薬による便秘状態のマウスに対し、熱殺菌した乳酸菌Lactobacillus casei subsp. casei 327(Lc327)が、排便促進効果を示すか検討した。熱殺菌Lc327を7日間摂取したマウスでは、排便量の増大と消化管内通過時間の短縮、腸管5-HT産生亢進が確認され、これらの影響は5-HT 合成律速酵素Tryptophan hydroxylase 1の阻害剤parachlorophenylalanineの投与により減弱する傾向がみられた。この結果は、熱殺菌Lc327により腸管で産生された5-HTが排便促進に寄与する可能性を支持する。また、下痢止め薬として使用されるロペラミドを投与することにより便秘状態としたマウスでは排便量が減り、便の消化管通過時間が長くなるが、これらの便秘症状は熱殺菌Lc327を7日間摂取させると顕著に改善された。この結果は新たな疑問を生じた。5-HTは5-HT受容体へ結合し、腸管の運動ニューロンから遊離されたアセチルコリンが腸平滑筋の運動を促す。ロペラミドは、腸管の運動ニューロンからのアセチルコリン遊離を遮断して腸運動を停滞させる。熱殺菌Lc327により5-HT産生が亢進したとしても、ロペラミドによるアセチルコリン遊離の遮断が腸運動を阻止することが懸念される。しかしながら、熱殺菌Lc327が便秘改善作用を示す結果を得た。この問題点について、次年度以降検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
R2年度に実施を予定していた抗生物質の投与により腸内細菌を減少させた便秘モデルマウスに対する熱殺菌Lc327の排便促進効果の検討に着手できず、次年度(R3年度)に実施することとなった。 本研究課題の全実施期間を通じ、5-HTを産生する腸クロム親和性細胞の増加や機能亢進へ導く要因について、また腸管5-HT産生亢進と免疫学的マーカーの変動との関連性について検討を進めるが、試験サンプルを調製する方法および条件の検討に想定より時間を要し、進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(R3年度)の重要な課題として、無菌マウスに対する熱殺菌Lc327の排便促進効果を調べ、乳酸菌の便通改善効果に腸内細菌叢が不可欠か否か解明に取り組む。この実験に先立ち、R2年度に着手できなかった抗生物質投与による便秘モデルマウスに対する熱殺菌Lc327の便通改善効果の検討を実施する。また、無菌マウスの受け入れや飼育環境の準備に要する期間に、通常のマウスを用いて熱殺菌Lc327による腸管5-HT産生亢進メカニズムと熱殺菌Lc327の免疫学的マーカーに及ぼす影響について検討を進める。これらの検討により得られた結果から重点を置くべき検討項目やポイントを絞り、無菌マウスに対する熱殺菌Lc327投与試験を実施する。この無菌マウスの実験では、熱殺菌Lc327の排便促進効果の有無だけでなく、同時に腸管5-HT産生への影響、腸管組織の変化、腸管免疫系の挙動変化に関するデータの取得を目標とする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大防止のための活動制限が影響し、R2年度実施予定の腸内細菌を減少させた便秘モデルマウスの実験に着手できなかった。また、R2年度に超低温フリーザーの導入を計画していたが、コロナ禍の影響により購入予定機種が品薄となり、納品がR3年度に延滞する事態となった。R2年度における未使用額は、この2点に由来する。このR2年度未使用額は、次年度(R3年度)に超低温フリーザー購入と腸内細菌を減少させた便秘モデルマウス実験の実施に活用し、本研究課題を鋭意推進する。 R3年度における請求額分は、当初の計画通り、R3年度実施予定課題(無菌マウスを用いた実験など)の遂行に使用する。
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