2020 Fiscal Year Research-status Report
NAD合成系酵素の発現制御機構の解明と食品因子による肥満関連疾患の予防への応用
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20K05922
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
三谷 塁一 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (40773304)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脂肪細胞 / イソフラボン / NAD / NAMPT |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満関連疾患の発症は,補酵素であるNAD+の減少による脂肪細胞の老化と,老化による炎症性物質の分泌増加に起因すると考えられている。そして,高脂肪食の摂取がNAD+合成経路の律速酵素Nicotinamide phosphoribosyl-transferase (NAMPT)の発現を抑制し,これがNAD+合成量の低下と細胞老化を引き起こすことが明らかにされた。従って,NAMPTは,細胞老化を介して肥満関連疾患を制御し得る鍵因子と考えられる。しかしながらNAMPTの発現制御機構には未解明な部分が多く残っている。そこで本年度は,脂肪細胞におけるNAMPTの発現制御機構の詳細を明らかにすることを目的とした。 1)Nampt遺伝子の発現を制御する転写因子の同定:前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化に伴ってNAMPTの発現量が増加することから、脂肪細胞分化に関わる転写因子がNAMPTの発現制御に関与することが示唆された。それぞれの転写因子をsiRNAでノックダウンする。もしくはアンタゴニストで阻害したところ、転写因子C/EBPβがNampt遺伝子の転写を制御していることを見出した。さらにC/EBPβには3種類のスプライシングバリアントが存在し、脂肪細胞の分化の寄与がほとんど無いバリアント(LIP)もNampt遺伝子の転写を促すことを示された。つまり、C/EBPβによるNampt遺伝子の発現制御は脂肪細胞分化の制御とは異なる作用メカニズムであることが示唆された。 2)食品因子によるNAMPTの発現制御の解析:大豆イソフラボンの一種であるゲニステイン(Gen)がC/EBPβのタンパク質安定性を向上することでNampt遺伝子の転写を亢進することを見出した。さらに、Genは標的タンパク質である細胞膜タンパク質PHB1と結合することでPHB1の安定性を向上し、細胞内シグナル伝達の活性化を介してC/EBPβのタンパク質安定性の向上に寄与することを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は動物実験の実施を予定していたが、それがまだ途中段階となっている。その理由としてCOVID19の感染拡大に伴い、学生の入校が一時禁止となった時期が生じたからである。人員が少なくなりノックアウト動物の飼育と繁殖が不十分であったため、必要な頭数が期間内に準備できなかった。現在、遅れつつも実施予定計画を遂行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験が遅れた分を修正して研究を実施する。
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Causes of Carryover |
前年度は全国的な緊急事態宣言により一時的に学生の学内入校が禁止されたため、それに伴い動物を用いた実験計画の実施を延期せざるを得なかった。今年度は延期していた動物実験の物品購入および繁殖費用にあてる。また、昨年度末に脂肪細胞の培養時に使用していた倒立顕微鏡が全損したため、それを新規購入する際の費用に一部あてる予定である。
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