2020 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性認知症に寄与する食品成分の時空間的制御機構の解明
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20K05924
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山下 陽子 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (10543796)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 体内時計 / 認知症 / GLP-1 / ポリフェノール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、肥満・糖尿病発症モデルマウスのob/obとKK-Ayマウスにおいて、時計遺伝子と摂食や高血糖との関係性を検討した。COVID-19予防の関係で、年度当初の3ヶ月程度は動物実験を実施することができなかったが、後半に研究を遂行することで、遅れをカバーすることができた。本年度に実施した研究の結果、肥満・糖尿病モデルマウスでは、時計遺伝子発現がノーマルマウスの発現パターンと比較すると異なっていることが判った。この時、食事誘導性の血糖スパイクには、時計遺伝子の発現が強く関与している可能性が明らかになり、その作用機序の一旦を解明することができた。また、高血糖抑制や認知機能の抑制に寄与することが知られている生体ホルモンのGlucagon peptide-1(GLP-1)分泌を促進する食品成分をin vitroでハイスループットに探索できるアッセイ系を樹立することができた。その方法を用いてスクリーニングを行ったところ、難吸収性ポリフェノールのフラバン3-オールや紅茶ポリフェノール、コーヒー抽出物、明日葉カルコンなどがその候補物質であることが判った。特に、フラバン 3-オールのプロシアニジンは、GLP-1分泌を介して、脳の視床下部に作用し、様々な腸脳相関ネットワークの基盤をになっている可能性を明らかにした。脳の視床下部を介して、摂食抑制に寄与するだけでなく、時計遺伝子の発現に関与する可能性を示唆する知見を得ることができた。フラバン 3-オールを豊富に含むカカオポリフェノールは、非活動期の前に摂取すると、より効果的に高血糖を抑制することが判った。このタイミングの差についても、時計遺伝子発現の違いが関与していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19予防の関係で、年度当初の3ヶ月程度は動物実験を実施することができなかったが、後半に研究を遂行することで、遅れをカバーすることができた。しかし、糖尿病や時計遺伝子の乱れと認知機能との関わり合いについて検討することができなかった点を考慮し、区分はやや遅れていると判断した。ただし、これらの病態の予防・改善に寄与すると期待される食品成分の候補をスクリーニングするアッセイ系をin vitroにて樹立することができたのは、大きな成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、高血糖や時計遺伝子の乱れと認知機能との関連性をより詳細に分析していく必要があると考えている。また、GLP-1が認知機能の予防改善に寄与するか否かについても、併せて検証を進める。認知機能の予防改善にGLP-1が関与することが示唆されているGLP-1分泌を促進する食品成分は複数種見出すことができたので、実際に動物実験においてもGLP-1分泌を促進するか否かについてとその作用機序の詳細も究明する予定である。
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