2021 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性認知症に寄与する食品成分の時空間的制御機構の解明
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20K05924
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山下 陽子 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (10543796)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸脳相関 / 脳炎症 / ミクログリア / 食行動の乱れ / Glucagon peptid-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、食餌誘導性肥満モデルマウスにおいて、クロダイズ種皮抽出物が脳機能や肥満・高血糖に及ぼす影響を検討した。①クロダイズ種皮抽出物 (BE) を高脂肪食 (HFD) に混餌した場合に、HFD摂取による食リズムの乱れを是正し、脳での作用が重要な役割を果たしていることを明らかにした。。またその効果にシアニジン 3-グルコシド (C3G) が寄与している可能性を明らかにした。また、②BEの強制単回経口投与は、迷走神経の活性化を介して摂食量を低下させることも明らかにした。①当初の仮説で、BE中のプロシアニジンが、消化管ホルモン分泌を介し、脳機能を是正するのではないかと仮説を立てて研究を行った。HFDの摂取は、視床下部弓状核 (ARC) に炎症をもたしたが、BEの4週間摂取は、このARCでの炎症を抑制し、摂食行動の異常を改善し、肥満も抑制した。現在、これが認知機能に及ぼす影響を検討するため、48週間投与したマウスを継続して飼育中である。次に、BE中の有効成分を同定するため、単量体フラバン 3-オール、重合体プロシアニジン、およびC3Gの3種類に分画し、HFDへ混餌した結果、C3Gが有効成分であることを明らかにした。②BEの単回強制経口投与における脳機能に与える効果についても検証した。その結果、BEは1回の投与で、消化管からの情報が求心性迷走神経を介して脳に伝達され、摂食を抑制する効果を発揮することがわかった。これらが、認知機能や脳での炎症にもたらす作用機構の詳細も検討し、消化管ホルモンのGLP-1が作用機構の一端を担う可能性を示唆する知見を得た。以上のことより、今年度は、本課題解決で基盤となる、糖尿病性高血糖が認知機能の低下に、BEが効果的に作用することを発見したとともに、今後も重要となる技術や実験手法を独自で確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、COVID-19の影響もなく、順調に実験を進めることができた。 特に、動物実験で高脂肪食摂取による、肥満・高血糖が惹起する脳機能への影響をクロダイズ種皮抽出物が改善するという発見ができたことは大きな成果であると考えられる。短期間の若齢マウスでは、高脂肪食を摂取させると、食行動が乱れるという異常行動を示すが、クロダイズ種皮抽出物を摂取させると、その異常行動が是正され、脳の炎症が改善されていることが主要な作用機構であることを見出した。これが、老齢になると認知機能の低下につながると考えており、現在、48週間飼育マウスの実験を継続中であり、2022年5月に飼育は終了する予定である。これらのマウスで、認知機能を評価する行動試験を実施するとともに、脳機能を評価し、本課題の達成を目指す予定である。 技術や設備はすでに整っているため、最終年度の研究も問題なく進展すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の最終年度は、老齢マウスで実際にクロダイズ種皮抽出物が認知機能の低下を改善するかとその作用機構の詳細を究明し、成果をまとめる。昨年度から継続して長期間(48週間)飼育したマウスの実験が2022年度初頭に終了するため、そのマウスでの行動試験や採取した組織サンプルを用いて、詳細な作用機構解明を実施する予定である。これまでの研究で、GLP-1が求心性迷走神経経路を介して、脳にシグナルを伝達することで高脂肪食摂取による食行動の異常を改善する効果を見出していることから、このホルモンが鍵分子となっている可能性を考え、焦点を絞って作用機構の詳細を明らかにしていけば、本研究課題の達成につながると考えている。また、腸脳相関作用によって、クロダイズ種皮抽出物は脳機能の炎症抑制に寄与することがわかっていることから、培養細胞ではなく、動物実験を用いて、主に研究を推進していく予定である。
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