2020 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンDの消化管炎症に対する関りと新規炎症性腸疾患治療戦略
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20K05940
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
岡田 只士 富山県立大学, 工学部, 研究員 (30623855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊 利之 富山県立大学, 工学部, 教授 (70293909)
橘高 敦史 帝京大学, 薬学部, 教授 (00214833)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ビタミンD / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脂溶性ビタミンの1つであるビタミンD(VD)と炎症性腸疾患(IBD)との関係性を、動物モデルを使用して広く解析し、VDをIBDの治療や予防に活用することを目的とする。近年、血中VD濃度がIBD症状の悪性化リスクと強く関連することが報告されている。また、VDがIBD治療に効果的であることを示唆する報告も多数なされている。その一方で、IBDに対するVD摂取の影響は限定的であるという報告も数多い。我々は食品より摂取されたVDは小腸より吸収されるため、IBD患部である大腸上皮にほとんど到達しないことが、その要因ではないかと推察し、デキストラン硫酸ナトリウム飲水投与による誘導性大腸炎モデルを用いて解析をおこなった。誘導性大腸炎モデルの大腸に生理的濃度のVD(100 nM 25OHD3、100 pM 活性型ビタミンD3)を直接投与したところ、炎症に起因する大腸長の短縮が抑制され、大腸炎症状の改善が認められた。一方、同量のVDを経口的に摂取させても、大腸炎病態の改善は認められなかった。以上の結果より、①VDが強い炎症抑制作用を有していること、しかしながら、②大腸炎においては、炎症患部にまでVDが到達できないため、VDを摂取しても、炎症抑制作用はほとんど認められないことがしさされた。本年度の研究成果より、VDを抗炎症薬として活用できる可能性が示唆され、①VDの大腸への直接的投与、あるいは②腸溶性コーティングなどでVDを大腸まで到達させるという、IBDに対する新たな治療法が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸炎モデルを用いた解析は概ね予定通り進行していると考える。その一方で、もう1つの課題:ビタミンD欠乏モデルを用いた解析は、モデル作成に手間取っている。上記の状況を鑑み、進行がやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
ビタミンD欠乏モデル解析はかなり手間取っているため後回しにし、順調に成果が得られている大腸炎モデルの解析を優先して進めることを計画している。研究開始当初は、動物モデルのみでの解析を計画していたが、今後はより詳細な基礎的な解析をおこなうため、培養細胞を用いた解析を新たに取り入れていくことを計画している。
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Causes of Carryover |
研究発表のため国内学会参加を計画していたが、特殊な状況(新型コロナの蔓延)により、学会参加を行わなかった。そのため、学会参加費および旅費として予定していた額を使用しなかった。次年度以降の学会参加に使用する計画である。
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