2022 Fiscal Year Annual Research Report
重力応答時の力学的最適化に働く細胞壁ホメオスタシス機構の解明
Project/Area Number |
20K05950
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岩井 宏暁 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30375430)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重力 / 力学的特性 / ペクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が陸上に進出する時、重力に対抗して自らの体を支えられるため、植物は細胞壁を発達させることで解決して来た。このプロセスの中で、植物が自らの姿勢 を正常に維持するための情報源として利用して来たのが「重力」である。申請者は現在までの成果として、ペクチン、ヘミセルロース、細胞壁構造タンパク質を 改変したイネのライブラリーを作成しており、そこから重力屈性が変化したイネの同定を試みた。40種以上の細胞壁改変イネライブラリーから探索した結果、倒 伏させた状態から回復する角度を調査した結果、β-キシロシダーゼ過剰発現イネで約46%、ガラクタナーゼ過剰発現イネで約11%高く、β-キシラナーゼ過剰発現 イネでは約10%低いことが明らかとなった。アラビノフラノシダーゼ過剰発現イネでは、遅延は起こるが最終的に野生型と同じ角度に回復することが示された。また、花粉管の通り道である花柱の力学的性質を決定するペクチンが、物理的障害として受精の調節を担っているかどうかについても調査した。ペクチンメチル基転移酵素(PMT)は、ゴルジ体で機能し、ペクチン合成時のメチル化制御を行っている。このPMEの変異体では、雌しべの花柱に異常が生じて、花柱においてペクチンがゲル化してしまい、花粉管が通過できずUターンしてしまうことを見出した。ペクチンはCaと結合する前は液状であるが、Ca-ペクチンとなるとゲルとなる。ペクチンとCaの結合に、ペクチンのメチル化調節が必須である。花柱は一本道のトンネルのような役割を果たしていると考えられてきた。しかし花粉管は花柱が、ペクチンとCaが結合していない柔らかい液体状の細胞壁でなければ機能せず、Ca-ペクチンゲルがある状態では花粉管不通過が生じていた。
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