2021 Fiscal Year Research-status Report
非定型カドヘリンFat3を介したミクログリアによるシナプス制御
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20K05951
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鶴田 文憲 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30571450)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ミクログリア / 神経細胞 / シナプス形成 / FAT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
発達期における脳は、神経回路網の構築と連動しながら、幼弱なシナプスを形成していく。その後、多様な刺激に応答しながら強固なシナプスとなる。この際、適切な刺激を受容できなかったシナプスは、ミクログリアの刈り込みによって除去される。昨年度までに申請者らは、非定型カドヘリンファミリータンパク質FAT3がシナプス形成に関与することを見出してきた。まず我々は、出生後のFAT3 KOマウス大脳皮質では、領域特異的に興奮シナプスと抑制性シナプスのバランスに変化が生じることを見出した。中でも興奮性シナプスの数は、野生型では、生後7日から28日かけて徐々に増加していくが、FAT3 KOでは、シナプス形成が顕著に抑制される。さらにFAT3 KOマウスのミクログリアを観察したところ、CD68陽性の貪食型ミクログリアの数が減少していた。申請者らの先行研究で、FAT3 KOマウスでは、ラミファイド型の形態をもつミクログリアが増加することを見出している。以上の結果から、FAT3が神経細胞とミクログリアの双方に発現し、シナプス形成の制御に関与することが示唆された。FAT3はホモフィリックあるいはヘテロフィリックな結合をしめすカドヘリンタンパク質の一つであると考えられている。それゆえ申請者らは、前シナプスと後シナプス、さらにはミクログリアの三者にFAT3とそのリガンドが発現し、シナプス結合の制御や特異的シナプスの刈り込みに寄与する可能性を想定している。2022年度は、これら相互作用が新しいEat meシグナルあるいはDon't eat meシグナルとして作用するか、初代培養細胞やAAVを用いた実験系で検証を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、ミクログリアに発現しているFAT3と神経細胞との関連性を、初代培養細胞を用いて検証を進めていく予定であった。一方、ミクログリアと神経細胞の共培養系の立ち上げが期待通り進捗せず、結果として、神経細胞-ミクログリア相互作用の影響をin vitroで確認するまでには至らなかった。一方、FAT3KOマウスを用いて、シナプス形成のより詳細な解析、またミクログリア貪食とFAT3の関連性の検証など、新しい知見も複数得られている。研究の進捗は若干遅れてはいるものの、2022年度には当初の計画まで達成させることを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、マウスを用いたin vivo解析を中心に進めていく。まず、FAT3 shRNAを発現するプラスミドやAAVを作成し、神経細胞FAT3が部分的にノックダウンされたマウスを作成する。その後、神経細胞FAT3の発現によってシナプス数に変化が生じるか組織染色で解析し、神経細胞のFAT3がシナプス形成に必要か検証する。最後に、野生型ならびにFAT3KOマウスの共培養系を樹立し、神経細胞におけるFAT3の重要性をin vitroでも解析する。またFAT3KOマウスにCSF1受容体拮抗薬PLX5622を導入してミクログリアを除去し、シナプス数に変化が生じるか検証する。これら実験を介して、神経細胞とミクログリアのどちらのFAT3がシナプス形成の中心的役割を担うか明らかにし、研究成果を論文として投稿していく。
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Research Products
(5 results)