2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the structure-function relationship and the sugar-recognition mechanism of novel mutidomain transglucosidases acting on starch
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20K05956
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
殿塚 隆史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50285194)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糖転移酵素 / マルチドメイン酵素 / α-アミラーゼファミリー / 澱粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
α-アミラーゼは澱粉に作用する代表的な酵素であり、通常のα-アミラーゼは約500アミノ酸残基で構成される。本研究では、既知のアミラーゼとは配列の相同性が低く約1000アミノ酸残基から構成され高い糖転移活性を示す、α-アミラーゼファミリーの酵素としては巨大なマルチドメイン酵素である、細菌Rhodothermus marinusのRmar_0285および細菌Flavobacterium johnsoniaeのFjoh_1408について、立体構造と性質の解析を行い応用につなげることを目的とする。これらの酵素は相同性を有し、ドメイン構成はN1-N2-N3-A/B-C-Dであることが、立体構造予測により推定されている。 本年度は、Rmar_0285のN3-A/B-Cという621アミノ酸残基から成るドメイン構成の酵素(以下Rmar_0285 N3-A/B-C)について立体構造を決定した。Rmar_0285 N3-A/B-Cを大腸菌で発現させ、Hisタグを用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製して結晶化を行い、高エネルギー加速器研究機構でX線回折を収集した。位相の決定は酢酸鉛を用いた単波長異常分散(SAD)法により、1.6-Å分解能の立体構造を決定した。Rmar_0285 N3-A/B-Cの構造は、ドメインN3およびドメインCはβ-サンドイッチ、ドメインAは(β/α)8バレルより構成されていた。本酵素の最大の特徴はドメインAから突き出したサブコンポーネントである。糖質加水分解酵素(GH)13のα-アミラーゼでは、このサブコンポーネントはドメインBと呼ばれるが、本酵素ではドメインBの他にドメインAから突き出したサブコンポーネントがさらに2ヶ所存在することが判明した。 また、本酵素と関連する、糖に作用する酵素の立体構造と機能の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象であるRmar_0285およびFjoh_1408は、強力な糖転移活性を有することが判明している。マルトオリゴ糖を基質とした時の反応生成物を薄層クロマトグラフィーで解析した結果では、これらの酵素はα-1,4-結合で構成されるオリゴ糖を生成すると推測された。今回、立体構造解析とともに生成物の解析をNMRで行ったところ、α-1,6-結合に相当するシグナルが反応時間とともに増加することが示され、本酵素は分岐構造の形成を伴う複雑な糖転移反応を進行させることが分かった。 立体構造解析の結果、Rmar_0285はドメインAに不随するサブコンポーネントが特徴的であった。通常のGH13に属するα-アミラーゼではこのサブコンポーネントはドメインBと呼ばれ、ドメインAを構成する(β/α)8バレルのN末端から3番目のβ-ストランドとα-ヘリックスの間に存在する。Rmar_0285では通常のドメインBの他に、4番目および8番目のβ-ストランドとα-ヘリックスの間にもサブコンポーネントが存在することが分かった。Rmar_0285では、ドメインBはアミノ酸残基番号498から533であり、これに隣接するアミノ酸残基番号569から587までが4番目のβ-ストランドとα-ヘリックスの間のサブコンポーネントを形成していた。このサブコンポーネントはドメインBと一体化して活性中心に溝を形成しており、長鎖の澱粉の認識および糖転移に重要な役割を果たしていると考えられた。 以上より、Rmar_0285の立体構造を決定したこと、および、酵素の反応生成物について解析を進めることができたことより、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Rmar_0285およびFjoh_1408は、その酵素反応はこれまでに知られていないため、生成した糖を用いた応用には、どのような酵素反応でどのような糖が生成するかさらに解明を進める必要がある。これまでの解析により、本酵素の生成物は単純なマルトオリゴ糖ではないことが示されている。しかしながら、例えばマルトテトラオースのような単一に精製された糖を基質とした場合でも、生成物はさまざまな長さのオリゴ糖の混合物となってしまうため、生成物を精製単離し構造を決定するのはなかなか難しい。このため、触媒残基を改変した酵素を作製して結晶化し、この結晶に反応生成物を混合物のままソーキングし立体構造を解析することで、どのような反応を行うか解析することができると考えている。現在、Rmar_0285の触媒残基Asp563をアラニン残基に置換した酵素の作製・結晶化を進めている。また、生成した糖が各種アミラーゼによってどのように分解されるか解析することにより、研究を進める。 これまでの研究でN3-A/B-Cについては立体構造およびその性質が明らかになったが、本酵素の全体の理解のためには、他のドメインの機能についても解析を進めることが重要である。各ドメインの発現系の構築を試みたところ、Rmar_0285のドメインN1(Rmar_0285 N1)が大腸菌で良好に発現することが分かった。今後は、Rmar_0285 N1について結晶化および立体構造を決定する。Rmar_0285 N1は糖に結合すると予想されており、電気泳動や他の手法を用い、どのような糖に結合するか解析を行い、糖の検出などへの応用を検討する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は予算計画に対し96.4%の執行と、若干次年度使用額が生じたが、ほぼ計画どおりの使用である。次年度使用額については、消耗品費として使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Enzymatic and structural characterization of β-fructofuranosidase from the honeybee gut bacterium Frischella perrara2022
Author(s)
Kubota, A., Kawai, R., Li, D., Kozono, T., Sasaki, N., Nishikawa, A., Fujii, T., Tochio, T., Tonozuka, T.
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Journal Title
Appl. Microbiol. Biotechnol.
Volume: 106
Pages: 2455-2470
DOI
Peer Reviewed
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