2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of physiological function of free N-glycans and application of the physiological function to development of biotechnology to control the plant development and growth
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20K05959
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木村 吉伸 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (70195387)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遊離N-グリカン / 細胞質PNGase / 酸性aPNGase) / ENGase) / 小胞体関連分解(ERAD) / Arabidopsis thaliana |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞体中で生じたミスフォールド糖タンパク質は,細胞質に逆輸送され小胞体関連分解を受ける。ミスフォード糖タンパク質は,プロテアソーム分解に先立ちcytosolic PNGase による脱グリコシル化を受け,還元末端側にキトビオースを有するハイマンノース型遊離N-グリカン (GN2-HMT-FNGs) が生成し,次いでENGaseの作用によりGN1-HMT-FNGsが生成する。A. thalianaを用いてENGase (At3g11040, At5g05460) 欠損体,およびENGase/cPNGase (At5g49570) 欠損体を作製した。一方で,cPNGaseの酵素活性はin vitroで直接証明されていないことから,At5g49570 の植物体中でのPNGase活性は不明であった。FNGs の生理機能を明らかにする研究の一環として①ENGase/cPNGase欠損体に生成するFNGsの構造特性解析,②cPNGase活性のアッセイ系の確立を試みた。 ENGase/cPNGase欠損体に産生されているFNGsの構造を解析した結果,GN2-HMT-FNGsはENGase欠損体から10.6 nmol/g,ENGase/cPNGase欠損体から4.7 nmol/gが検出され,cPNGaseは植物中でGN2-HMT-FNGsを生成していることを確認した。②酸性PNGase欠損体から粗酵素液を調製し,基質としてRCM化トランスフェリンを用いて,cPNGase活性の検出を試みた。粗酵素液と基質を還元状態及び非還元状態で25℃,18時間反応させた後,反応生成物を蛍光標識し,陰イオン交換HPLCでシアル酸含有糖鎖を分画し,逆相HPLC,ESI-MS分析により遊離糖鎖の構造を解析した。その結果,還元条件下のみで cPNGase活性が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小胞体関連分解 (ERAD)に関連して,ミスフォールド糖タンパク質かからの遊離N-グリカン (FNGs) 生成に関与する2種類の酵素,cPNGase と ENGase の2重欠損(遺伝子的には3重欠損)株の構築に成功し,変異株に特徴的な表現型が現れないことを確認した。変異株中にも野生株と同様にFNGsが生成していることを見いだし,cPNGase と ENGaseが関与しない FNGs 生成機構が存在することを明らかにした。従って,cPNGase/ENGase 欠損によってもFNGsが存在することから,A. thaliana におけるFNGsの生理機能をcPNGase/ENGase 欠損から明らかにすることは困難であることを証明できたと考える。一方,ENGase 欠損株ではGN2-FNGs のみが著しく蓄積することから,植物細胞においてもENGase はcPNGase 生成物を基質にすることを証明した。更に,cPNGase 候補遺伝子については,この遺伝子産物が植物細胞内でPNGase活性により,糖鎖遊離を司っているか否かについては,in vitro活性測定系が確立されていないため,これまで不明であった。今年度,新たなin vitro PNGase活性測定系を確立することで,aPNGase 欠損株を酵素試料として用いて,cPNGase 活性を植物抽出液中で検出することに世界で初めて成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
トマトについてはFNGs生成酵素遺伝子の発現抑制株の構築が進んでいなかったが,令和2年度にはゲノム編集技術の導入に成功したので, CRIPPR-Cas9 法を用いて ENGase, cPNGase, aPNGase 遺伝子発現抑制株の構築を行う。既にENGaseについては,2種存在する遺伝子の抑制株の構築に成功している。トマトは果実成熟に及ぼす影響を解析することができるため,A. thalianaとは異なる視点からの FNGs 機能の把握が期待できる。糖鎖遊離酵素遺伝子の発現抑制株については,発芽率,成長速度,種子形成能,ストレス環境に対する耐性(塩,乾燥,温度)等についての解析を行うことで,FNGs生理機能の検証を進める。 A. thaliana では発現抑制株で発芽率や環境ストレス耐性に差異が観察され, トマトではaPNGase遺伝子の過剰発現株で果実熟成の促進が観察されていることから,FNGs 或いはFNGs 生成機構の重要な生理機能や意義を証明しつつある。更に,FNGs のシグナル分子機能を考える上では,レセプターキナーゼ (RK)やレクチン様転写因子(LLTF)の存在が想定されるが,候補となるレクチン様キナーゼの存在がin silico 分析で示唆されている。申請者は,これらレセプタータンパク質の精製・同定に向けて新規糖鎖ポリマーの合成にも成功しているので,それらの新しいツールを用いてFNGs特異的なRKやLLTFの同定を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス禍による実験制限により,昨年度に計画していた実験が遂行不可能になったため,その実験に充てる予定であった経費が残った。
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Research Products
(8 results)