2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of physiological function of free N-glycans and application of the physiological function to development of biotechnology to control the plant development and growth
Project/Area Number |
20K05959
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木村 吉伸 岡山大学, 環境生命科学学域, 教授 (70195387)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 遊離N-グリカン / 細胞質PNGase / 酸性aPNGase / ENGase / 糖鎖機能 / オーキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞体中で生じたミスフォールド糖タンパク質は,細胞質に逆輸送され小胞体関連分解を受ける。ミスフォード糖タンパク質は,プロテアソーム分解に先立ちcytosolic PNGase による脱グリコシル化を受け,還元末端側にキトビオースを有するハイマンノース型遊離N-グリカン (GN2-HMT-FNGs) が生成し,次いでENGaseの作用によりGN1-HMT-FNGsが生成する。特に,分化成長中の植物には比較的高濃度でこれらFNGsが蓄積している。植物の分化成長に関わるこれらFNGsの機能解明研究の一環として,令和3年度にはCRIPPR-Cas9 法を用いてENGase欠損トマトを構築した。ENGase 活性の消失とともに,A. thalianaのENGase欠損体と同様,cPNGase により生成したと考えられるGN2-HMT-FNGsのみが観察されたが,果実熟成の速度や果実の大きさ等には野生株との間で差異は観察されなかった。一方,FNGs のシグナル分子機能を考える上では,レセプターキナーゼ (RK)の存在が想定されるが,候補となるレクチン様キナーゼの存在がin silico 分析で示唆されている。令和3年度には,FNGsを多価カップリングさせた人工糖鎖ポリマーも用いて,大豆ミクロゾーム膜画分から糖鎖結合タンパク質の同定を開始し,HMT-FNGsに結合するRK候補を得ることに成功した。更に,トマトXylem sap に存在する植物複合型のGN2-FNGsがオーキシン(インドール酢酸)やトリプトファンと相互作用することを予備実験的に見いだし,FNGsの植物の分化成長に関わる機能の一端を見いだした可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トマトENGaseについて,CRIPPR-Cas9 法を用いて遺伝子発現抑制株の構築に成功し,変異株におけるENGase活性及びENGase産物の消失を確認した。しかしながら,果実成熟には野生株と大きな差異は認められなかったことから, GN1-HMT-FNGsは果実熟成促進活性を有していないことが明らかになった。その一方で,ENGase産物であるGN1-HMT-FNGsの機能検索を行う過程で,腸内細菌の一種(Bifidobacterium longum subsp. Longum)に対して増殖活性を有する知見が得られた。この結果は,FNGsの機能性食品としての機能の一端を見いだした可能性がある。 また,FNGsに対するレセプターキナーゼの存在を証明するために,当研究室で合成法を確立した人工糖鎖ポリマーを用いて,大豆ミクロゾームの膜画分から HMT-FNGsに結合するタンパク質の調製に成功したことは,GN1-HMT-FNGsのシグナル分子機能を明らかにするための重要な進展であると思われる。更に,植物複合型FNGsがインドール酢酸やトリプトファンと相互作用することを世界に先駆けて発見したことは,FNGsの生理機能解明に向けての大きな一歩だと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
FNGs生成に関与するENGase, cPNGase, aPNGase の遺伝子発現抑制株では,トマト及びA. thaliana いずれにおいても大きな表現系の差異が確認できなかった。しかしながら,これら3種酵素の発現を全て抑制した変異株の構築は完了しておらず,令和4年度にはゲノム編集により,3重変異株の構築を行う。糖鎖遊離酵素遺伝子の発現抑制株については,発芽率,成長速度,種子形成能,ストレス環境に対する耐性(塩,乾燥,温度)等についての解析を行うことで,FNGs生理機能の検証を進める。一方,以前にaPNGase の過剰発現株について果実熟成が促進される傾向が観察されているため,上記3種の酵素についてトマト,A.thalianaを用いて過剰発現株の構築を進める。一方, FNGs を認識するレセプターキナーゼ (RK)の同定を進めるとともに,FNGsとオーキシンとの相互作用についても,糖鎖構造との相関の見地から詳細な解析を進める。当研究室には糖鎖ライブラリーが整っているため,オーキシンとFNGsとの相互作用について新たな知見が得られると期待される。
|
Causes of Carryover |
コロナウィルス禍による実験制限により,昨年度に計画していた実験が遂行不可能になったため,その実験に充てる予定であった経費が残った
|
Research Products
(5 results)