2022 Fiscal Year Research-status Report
真核生物のリボソーム合成制御の新規機構:ラパマイシン結合タンパク質の真の役割
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20K05965
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
笠原 浩司 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (40304159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志波 優 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (00647753)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リボソームタンパク質遺伝子 / 出芽酵母 / カンジダグラブラータ / FKBP12 / 転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
・出芽酵母のRPGリボソームタンパク質遺伝子(以下RPG:ribosomal protein gene)の転写因子であるRap1、Fhl1、Hmo1、Ifh1、Sfp1、Fpr1、Crf1について、機能的・物理的相互作用を明らかにするべく遺伝学的解析を行った。その結果、FHL1遺伝子の破壊やCrf1過剰発現、何らかの因子のプリオン化、等の状況で、IFH1破壊株の致死性が回避されるなど、不明な点が多いそれらの因子の機能に関する手がかりが得られた。 ・生育が極めて悪いfpr1Δfhl1Δ二重破壊株に、Met1を除く全ての残基をアラニン(元がアラニンの場合グリシン)に置換したFpr1変異体シリーズを導入し、この株の生育を回復させる事が出来ない変異体のうち、タンパク質自身は安定なものを12個同定した。 ・上記RPG転写因子の全長を、N末端にGSTタグ、C末端にHisタグを融合して大腸菌で発現させるためのプラスミドを構築し、発現を行った。その結果、Ifh1を除く全てのタンパク質を、その量には差はあるものの、全長として発現することに成功した。 ・病原性酵母カンジダ・グラブラータの上記RPG転写因子のオルソログについて、ChIP-seq解析により全ゲノム上の標的遺伝子を網羅的に同定した。その結果、これらの因子は本酵母においても様々な組み合わせでRPG遺伝子プロモーターに結合していることを明らかにした(Sfp1は結合が見られず)。さらに本酵母で独自にRPGの転写に関与する因子を新たに同定し、それについても標的遺伝子の同定に成功した。 ・上記両酵母で保存されているFpr1/FKBP12の転写因子としての機能がヒトでも保存されているのかを検証するべく、HEK293細胞のFKBP12遺伝子に対してゲノム編集を行うことでそのノックアウト細胞、及びC末端領域に免沈用のタグを組み込んだ細胞を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出芽酵母のFKBP12であるFpr1の転写における役割や関連する因子の探索については、Fpr1をベイトにしたツーハイブリッドスクリーニング、及びFpr1に転写が強く依存するRPS24Bプロモーターを用いたレポーターアッセイを行い、それぞれ複数の遺伝子を単離した。現時点ではそれらの因子がとれた理由が生理的な機能を反映したものか未確定である。一方、Fpr1の各種機能領域の特定については、アラニンスキャニングによる網羅的解析により、多くの手がかりが得られた。Fpr1のN末端領域内のいくつかのアミノ酸の変異によりDNAへの結合能、及びfhl1Δfpr1Δ二重破壊株の生育回復能が失われることを見いだした。さらにFpr1の安定性は損なわずにその機能(二重破壊株の生育回復能)を消失するアミノ酸残基が集中する領域を見いだした。これらのFpr1変異体の機能欠損を抑圧する変異株も取得し、その変異点の同定を進めている。 RPGのin vitro転写系を用いた解析については、必要な転写因子の発現・精製を一部完了しているが、100kDを超える因子(全長)は実験に用いるのに十分な量を得られておらず、発現系を改良・変更し、その調製を継続して行っていく。 他の生物におけるFKBP12の機能解析については、病原性酵母カンジダ・グラブラータを用いて行ったChIP-seq解析により、Fpr1が本酵母においてもRPGプロモーターに特異的に結合していることを見いだした。加えて、他の出芽酵母のRPG転写因子のオルソログや新たに同定した転写因子の標的分子もRPGを含め網羅的に同定した。 動物細胞のFKBP12については必要な細胞株の樹立を完了し、現在解析を行っている途中である。 本研究は申請当初の計画のいくつかは目標まで達していない一方、予想以上に発展しているものもあり、総合的にみるとやや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に記載した、出芽酵母においてIfh1を中心に遺伝学的相互作用が見いだされたRPG転写因子について、その相互作用の実態を(DNAを含む)因子間の物理的な相互作用を含めて解明していく。 現在までの進捗状況に記載したうち、解析途中の研究や、細胞の樹立が完了したヒト細胞を用いた研究については、継続して研究を行い一定の結論を得る。 Fpr1の機能解析、及び関連する因子の探索については、変異により失われたFpr1の機能を解明するとともに、それを抑圧する変異遺伝子の同定を進め、Fpr1の重要な機能に関連する他の因子の同定を進める。 カンジダ・グラブラータにおいてRPGプロモーターに結合することが明らかとなった各種転写因子については、その遺伝子破壊株(必須遺伝子についてはTet-offによる転写抑制株)を作製し、その欠損が転写に与える影響を調べ、RPG転写への関与を明らかにする。病原性真菌である本酵母のRPG転写制御は出芽酵母に近いと推測され、これまで出芽酵母で得られた知見の多くがカンジダのRPG転写制御の理解のための手がかりとなる。一方、これらの転写制御因子の多くは(FKBP12以外)動物細胞においてはオルソログと言えるものが無く、また既知の報告からも酵母とヒトではリボソームの機能は高度に類似しているが、その作られ方は大きく異なっていると推測されるため、リボソーム構成因子の遺伝子の転写制御は、ヒトには無害で一部の病原真菌の生育を特異的に阻害する抗真菌剤の標的として期待できるものと考え、そのような薬剤の探索を含めて研究を発展させて行きたい。加えて新たにカンジダでRPGの転写因子の候補として同定した因子については、出芽酵母では RPG転写に関与しておらず、さらにカンジダでは二つのオルソログがあることなどから、本酵母独自の転写制御の存在が示唆されるため、それを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
研究費の受領初年度、大学の研究室が約半年閉鎖、もしくは活動が大きく制限され、その分コロナ禍における、研究以外の各種対応に大幅に時間を割くことになり、予定していたエフォートの時間を確保することが極めて困難となった。また同様の理由により研究室全体のアクティビティーも大幅に制限され、予定していた実験計画の遂行に大きな遅れが出た。以上の理由により、研究費の使用に影響がでた。そのような中で継続的に行って来た遺伝学的解析によって蓄積している各種酵母変異体の解析をまとめて効率的に行い、遅れている研究も推進したいと考えている。
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Research Products
(2 results)