2021 Fiscal Year Research-status Report
8アミノ酸ペプチドGmPep941を利用したグリセオリン高蓄積ダイズの分子育種
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20K05972
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山口 夕 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60335487)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ダイズ / 病害虫抵抗性 / 生理活性ペプチド / グリセオリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではダイズ8アミノ酸ペプチドGmPep914を過剰に発現させることにより、機能性成分であるグリセオリンを高蓄積するダイズ系統の作出を目指している。前年度に引き続き、発現ベクターの構築、ダイズへの形質転換を進めている。また、効果を前もって確認するためにダイズの培養細胞を作成し、ペプチド投与実験を行った。 前年度はGmPep914前駆体を恒常的に強く発現させるベクターを用いた形質転換体の作出を進めていたが、さらに改良した2種類の発現ベクターを構築した。一つは、成熟GmPep914をコードするDNA配列とプロテアーゼインヒビタータンパク質の細胞外分泌シグナルをコードするDNA配列を連結したキメラ遺伝子を持たせたベクターである。これによって、GmPep914前駆体のプロセシング過程を省き、確実に細胞外へと放出させられることが期待できる。しかし、恒常的なGmPep914の細胞外での生産は、植物の生育にダメージを与える可能性もある。そこで二つ目として、このキメラ遺伝子を熱誘導性プロモーターの制御下で働かせるベクターを構築した。これによりGmPep914の発現時期を制御することが可能になる。 GmPep914によるグリセオリン合成誘導について、また構築した発現ベクターの機能を確認するために、ダイズの培養細胞を作製した。予備的な実験ではあるが、培養細胞にGmPep914を投与することで、グリセオリン合成が誘導される結果が得られている。機能を失わせたGmPep914の変異タンパク質やエリシターとして投与した酵母抽出物では、グリセオリンの合成は認められなかった。さらに、GmPep914のダイズ培養細胞への処理では、グリセオリンだけではなく複数の二次代謝産物の合成が誘導されたので、どのような代謝経路に影響を及ぼしているのか興味が持たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各種の発現ベクターの構築は進められたものの、形質転換体の作出自体はまだ実現できていない。作製したダイズ培養細胞の実験から、GmPep914のグリセオリン以外の代謝産物蓄積への影響が新たに発見されたため、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したダイズの培養細胞を用いて、GmPep914とGmPep890の植物細胞への影響、特にグリセオリン合成誘導について詳細な解析を行っていく。具体的には、グリセオリン誘導に有効なペプチド濃度や、処理後のグリセオリン蓄積量の変化、グリセオリン以外の主要なイソフラボン含量の変化の調査である。また、作製した3種類の発現ベクターに加えて、シロイヌナズナの低温誘導性プロモーターを利用した4つ目の発現ベクターの構築も予定している。これらの発現ベクターを用いて、まずはその効果を短期間で確認するために、ダイズ培養細胞の形質転換に挑戦し、代謝産物の分析を行う。ダイズ植物体の形質転換は時間が掛かるため、培養細胞を用いた実験と同時並行して植物体の形質転換についても進めていく。
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Causes of Carryover |
研究の進行が計画よりも少し遅れてしまったことに加え、2020年度および2021年度はCOVID-19の感染拡大により、旅費の使用がなかったことによる。 引き続き形質転換とグリセオリン分析に必要な消耗品(培地やホルモンなどの試薬)に使用する。
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