2022 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム編集を利用したリン酸飢餓耐性を持つイネの作出と遺伝子機能の解析
Project/Area Number |
20K05973
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
松本 隆 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (60370681)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イネ / ゲノム編集 / リン酸吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノム編集技術を活用して、植物のリン酸のホメオスタシスを変更し、低リン酸条件でも生育するイネ突然変異体を作出することが目標である。研究対象としてはリン酸不足に応じてリン酸輸送体・リン酸移動遺伝子を活性化する転写因子OsPHR2を阻害するOsSPX1遺伝子および、リン酸トランスポーターの分解の阻害を起こすOsNLA1を選択した。 OsSPX1ゲノム編集体についてはゲノム編集によって得られたT1個体34個体のPAM配列近傍の塩基配列を調べると、ホモ変異は1塩基挿入(フレームシフト)および、2塩基欠失、17塩基の欠失が起こっていた。 OsNLA1ゲノム編集体についてはOsSPX1と同様に得られたT1個体15個体のうちホモ変異体が3個体、ヘテロ変異体が3個体、野生型その他が9個体であった。塩基配列を調べると、ホモ変異は1塩基挿入(フレームシフト)が起こっていた。 T1で得られたホモ変異個体を株分けし、MS培地(リン酸濃度1.3mM)と、低リン酸MS培地(リン酸濃度0.03mM)で、30日間栽培し,地上部と根を分離し、マラカイトグリーン法によって無機リン・全リン酸の測定を行なった。SPX1変異体については、低リン酸培地の方が生育は良く、SPX1は、高リン条件においてリン酸の組織への固定を過剰に促進している可能性がある。また蓄積リン酸の量が特に変異体の根で減少する傾向が見られた。これもSPX1がリン酸の吸収を促進するという従来の説に合致した。 NLA1変異体については、植物体の大きさはSPX1とは反対に、高リン条件のほうが若干大きい結果が得られた。リン酸蓄積量は、高リン酸、低リン酸両方で地上部の濃度が減少したが、根では変化が少なかった。高リン条件においてリン酸の組織への固定を促進している一方、低リン条件における地上部へのリン吸収を促進している可能性がある。
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