2021 Fiscal Year Research-status Report
Ecophysiological and genetic study on effects of arbuscular mycorrhiza on rice growth
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20K05995
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴨下 顕彦 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10323487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津釜 大侑 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10726061)
大友 量 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (80355081)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イネ / トウジンビエ / 菌根菌 / 根系 / 接種試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネとAM菌の共生系の形成と生産性への、培地の水分条件とイネ品種による影響について、以下の知見を得た。 (1)感染率の水条件に対する応答を、合計8つの試験を行い結果を解析した。イネ苗では、乾燥条件が強い方が、菌糸感染率は高くなる傾向であった。ポット試験でも圃場試験でも、潅水制限による乾燥処理により、植物体のシュートも根も成長は抑制されたが、感染率には大きな変化はなかった。嚢状体数による感染率は、成長が劣っていたコシヒカリの方がトウゴウ4号よりも多かったが、潅水を十分行った処理区の菌糸感染率は、トウゴウ4号の方が高くなった。イネの深層の根量は減少したが、感染率はより高かった。菌根菌接種処理により、出穂期の感染率の変化は検出できなかったが、植物体の生産量は向上した。 (2)圃場試験によりイネ64品種の菌根菌接種効果と感染率を解析した。菌根菌接種により根乾物重が増加した。菌根菌接種効果指数には、マイナスからプラスまで、品種間差が見られたが、マイナスのものには水稲品種が多かった。定量PCRで求めた抽出DNAあたりのAM菌コピー数はイネ品種間で有意な差がなく、イネの成長量との関係は検出できなかった。一方、遺伝的背景の異なる3品種について幾つかの根の形状による感染率を比較したところ、抽出DNAあたりのAM菌コピー数には品種間差がみられ、Kinandang Patongで最も高かったが、側根の多い太い冠根でその差異が大きい傾向だった。顕微鏡による感染率も、側根の多い太い冠根が高かった。 (3)菌根菌叢は宿主の種類(トウジンビエvsイネ)や水分処理の影響を受けて有意に変化したが、菌根菌資材接種の効果は有意ではなかった。宿主間で存在割合が異なるOTUを抽出したところ、イネで有意に増加するOTUが4本、トウジンビエで有意に増加するOTUが8本認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症拡大による温室や圃場の利用制限が課せられた期間(2020年3月ー6月)に試験を開始できなかったことが、現在の遅れに影響を及ぼしている。感染率の顕微鏡観察に時間がかかっている。また、多様性解析を行った際に、低分子の反応産物の混入など、予期せぬ事象にぶつかり、解析がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、水分処理試験の表現型の解析をとりまとめ、感染率の水分条件に対する保守性について、成果を公表する。第2に、リンなどの化学分析も行う。第3に、多様性解析も並行して行い、取りまとめて発表する。第4に、品種間差について、2年目の試験を行い、感染率や接種効果指数などの解析を取りまとめ公表する。第5に、ゲノム領域解析を試行する。根の形状の感染率への影響は、今期のサンプリングと感染率の定量の差異の根の選択に活用する。また、2021年度までのデータの分子生物学的解析を並行して進めて、イネの菌根菌感染に関する水分処理への応答と、品種間差に関して、作物学的、組織学的、分子生物学的知見の結論を得る。今年度中には解明できない問題も残ると予想されるので、それらについては、新しいプロジェクトとして提案する。
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Causes of Carryover |
化学分析のためのサンプルの調整が遅延したことと、2022年度に研究支援者雇用の可能性が生じたため
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