2021 Fiscal Year Research-status Report
ハダカムギの硝子質粒発生に関する生理的機作の解明と晩播での高収高品質管理の提案
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20K06001
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
荒木 卓哉 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (10363326)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハダカムギ / 硝子率 / 晩播き / 窒素分施 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,本研究ではハダカムギにおける硝子率発生の実態について明らかにするために分げつおよび1穂内の子実着生位置ごとの硝子率の変異とその要因について解析した.また,晩播種における収量性について検討するために,節位別の分げつ発生率に着目して乾物生産を検討した. 原麦1粒の硝子率は硝子率は分げつ間において違いが認められ, 高位節分げつになるほど高くなった. 硝子率は成熟期9日前から急激に低下した.硝子率が低下した時期において相対湿度の低下と4mmの降雨が認められた.成熟期直前の硝子率の低下は乾燥後の吸水により硝子質粒が粉状化したためであると推察された.子実含水率は開花後徐々に低下した.分げつごとの子実着生位置別硝子率は下段ほど高くなり,その変異は高位節ほど大きくなった.開花後35~40日における子実含水率は中下段よりも上段において低くなっていることから,着生位置別の硝子率の変異は,着生位置ごとの乾燥程度の違いが吸水による粉状化に差異を生むことで生じていると示唆された.以上のことから, 圃場内における硝子率の変異は,成熟期直前の子実含水率に違いがある分げつおよび子実着生位置間において,吸水による粉状化に差異があったことで生じたと考えられた. 出穂期において個体数は処理間で有意差が認められ,晩播11g区が最も多く,標播が最も少なかった.個体あたりの茎数および地上部乾物重は標播区が有意に多く,次いで晩播8 g区,晩播11 g区の順となった.茎の出現率および生存率は,いずれの処理区においても出現の早い茎で高く,遅い茎で低い傾向がみられたが,個体の構成は異なった.収量には各処理で有意差が認められず,面積当たりの穂数は晩播11g区が最も多く,晩播8g区が最も少なかった.以上のことから,本実験では個体あたりの茎数および穂数に関わらず,収量への寄与はMS~T2が大きいことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原麦1粒レベルで開花以降成熟期まで定期的に乾物重と硝子率の経時的変化を明らかにできた.また,硝子質粒の形成の要因について登熟中期から後期における相対湿度や降雨との関係の可能性を示唆する結果を得ることができた.また,低硝子率品種であるハルヒメボシと高硝子率品種であるマンネンボシを用いることで,硝子率発生に関する品種間差異についても明らかにすることができた. 晩播種における収量性に関しては,生産現場で晩播で推奨されている播種量を増加させることによる収量性の改善に関する要因を分げつごとの乾物生産特性により明らかにすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,年次変更の影響も考慮した解析を行う必要性があることから,これまでと同様の処理を設けて栽培試験を実施する.硝子質粒発生のメカニズムの解明においては,登熟中期~後期における子実の水分含量の影響を考慮した処理区を設け,水分の影響に関するより詳細な解析を行う.また,開花期以降の原麦1粒当たりの窒素含有率や電子顕微鏡による形態観察を行い,定量的および形態的特徴に基づいた硝子質粒発生要因について明らかにしたい. また,晩播種の収量性については播種量を増加させた場合による個体レベルと単位面積レベルでの解析により,高位節由来の分げつの有効化もしくは無効化の意義について明らかにしたい.
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