2020 Fiscal Year Research-status Report
積雪地の環境条件が麦類の穂の形態形成に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
20K06005
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
島崎 由美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 主任研究員 (80414770)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池永 幸子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 主任研究員 (10546914)
関 昌子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 上級研究員 (50414636)
下田 星児 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上級研究員 (80425587)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | コムギ / オオムギ / 寒冷地 / 幼穂 / 穂形態 / 発育予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年産は、いずれの栽培地においても暖冬年であった。特に、上越では例年と比較して降雪量が著しく少なく、連続積雪期間が無かった。そのため、積雪期間前後を想定した「越冬前」「越冬後」の定義をすることができなかった。芽室では、土壌凍結のためオオムギの越冬株率および越冬主茎率が低く、主茎の幼穂成長に着目した解析を行うことが難しかった。 幼穂成長は、オオムギ、コムギともに品種間の違いもあったが、栽培地の違いが大きいことが確認され、今回供試した寒冷地に適した品種における品種間差よりも気温や日長の影響が大きいと考えられた。幼穂分化速度は上越の方が盛岡より速く、幼穂長も大きかった。幼穂長と稈長の関係は栽培地により異なっており、幼穂長と稈長が異なる機構により制御されていると推察された。 穂相においても、オオムギ、コムギともに品種間の違いもあったが、栽培地の違いが大きいことが確認された。オオムギは上越が盛岡よりも穂が短く下部不稔率が高く、1粒重が軽いことが、コムギは上越が盛岡より穂が短く1穂粒数が少ないことが確認された。 小穂分化期間前後の植物体の栄養状態の指標として、窒素含有率およびNSC含有率を葉身と稈および葉鞘に分けて測定した。窒素含有率、NSC含有率は、調査地点別、麦種別では、品種を問わず同様の傾向を示した。調査地点間および麦種間では、窒素含有率、NSC含有率の増減傾向は異なっており、小穂分化期間の環境条件の影響を受けていると考えられた。今後、環境データ、窒素含有率およびNSC含有率の推移と小穂分化数との関係について検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年産については、全国的に記録的な暖冬年となった。特に、上越では長期積雪期間が観察されず、長期積雪期間の前後としていた「越冬前」と「越冬後」の定義をすることができなかった。幼穂の生育ステージや播種後の積算気温などを用いることで、栽培期間の異なる栽培地のデータを比較することを検討することとする。 幼穂調査および穂相調査、環境要因のデータ収集については、予定通り実施することができた。しかし、芽室では耐寒性の劣るオオムギの越冬が難しく、個体や主茎の凍死が多く発生することが明らかとなった。本研究では、主茎の幼穂成長に着目した解析を行うことにしており、芽室のオオムギデータは最終的な解析には使用できないと考えられた。 栄養状態や環境データと小穂分化期間の長さの解析については、複数年次のデータを解析する必要があるため、次年度も引き続きデータ収集、整理を進め、最終年度に解析を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年産においても、2020年産と同様に現在栽培試験を実施中であり、環境データの収集や幼穂調査や穂相調査、成分分析を行い、データを蓄積する予定である。個体や主茎の凍死が多発する芽室のオオムギの調査はこれまで通り実施するが、データの解析に当たってはデータの使用について考慮する必要がある。また、個体や主茎凍死という観点からデータを利用できる可能性についても検討したい。 栄養状態や環境データと小穂分化期間の長さの関係の解析は、複数年次のデータを解析する必要があるため、2021年産においてもそれぞれのデータの蓄積と整理を行う。長期積雪期間が観察されなかった上越の2020年産では、「越冬前」「越冬後」が決められなかったため、これらの定義の代わりに、幼穂の発育状態を指標として各栽培地の栄養状態や環境データを比較することとした。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍があり、研究打ち合わせとして使用する予定であった旅費が使用できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度以降研究打ち合わせを行う際の旅費とする。 また、北海道は2020年初冬が厳寒となり、越冬が難しい品種が複数生じた。試料を確保するために、保温資材を用いた試験を追加する必要が生じている。資材費として、次年度繰り越して使用する。
|
Research Products
(1 results)