2021 Fiscal Year Research-status Report
大豆の単収増加と良食味米の安定生産の両立を目指したN吸収量が増えにくいイネの探索
Project/Area Number |
20K06009
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
鮫島 啓彰 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 研究員 (50580073)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水稲 / 大豆 / 田畑輪換 / 地力窒素 / 窒素吸収量 / 窒素濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
水稲―大豆の田畑輪換体系において、大豆の単収増加を目指して地力窒素を上げると、復元田で栽培する水稲の窒素吸収が増えるため食味が低下しやすい。本研究では、地力窒素の増加に伴う窒素吸収量や窒素濃度の上昇が少ないイネの探索を目指す。 地力窒素の増加を模するため、窒素成分の溶出するが緩やかな緩効性肥料を用いて、小型のインキュベーター内で世界のイネ・コアコレクションに含まれる品種を2か月栽培した。窒素施肥量はポットあたり200、400、600㎎の3段階とし、それぞれN1, N2, N3処理とした。 当該年度は7品種の評価が終了し、N3処理における地上部乾物重が大きい順に並べるとBINGALA、NIPPONBARE、PADI KUNING、RAMBHOG、PULUIK ARANG、SHUUSOUSHU、DAVAO 1となる。 地上部乾物重が大きい最初の3品種(BINGALA、NIPPONBARE、PADI KUNING)では、窒素施肥量が2倍、3培になると窒素吸収量も2倍以上、3培以上となった。また窒素濃度も窒素施肥量の増加につれて高くなっていた。すなわち、窒素が供給されるだけ吸収し、植物体も大きくなるタイプのため選抜対象ではないと判断できた。 上述の3品種より地上部乾物重が小さいRAMBHOG、PULUIK ARANG、SHUUSOUSHUは、DAVAO 1は窒素供給量が2倍、3培になっても、窒素吸収量は2倍以下、3培以下であった。しかし、全品種のデータを用いて得られる地上部乾物重と窒素濃度の有意な強い負の相関から大きく外れる品種はなかった。すなわち、地上部乾物重が小さいこれらの4品種は、窒素施肥量が増えると窒素濃度が高くなることから選抜対象ではないと判断できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大型の人工気象室の冷却設備の故障が頻発したことから、小型のインキュベーターを用いた試験に切り替えざるを得なくなった。しかし、小型のインキュベーター内でイネを栽培すると、多くの品種で、播種後1か月頃から新葉が白色で出現しそのまま展開せずに枯死してしまう現象が発生した。主茎および分げつの新葉が枯死し、そのうちに古葉の枯死も進行するため、この現象が発生した品種は正常な生育をしたとは考えられず、乾物重、窒素濃度、窒素吸収量の分析から除外した。このため評価を行ったイネの品種数が当初の予定より減ったことから、やや遅れているという区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
小型のインキュベーター内で新葉が枯死する明確な原因究明はできていないが、換気を強化し、湛水状態を避け、潅水にはファインバブルが含まれる水を用いることで、症状を大幅に軽減することができた。これらの対策方法を用いて、小型のインキュベーター内での世界のイネ・コアコレクションの評価を継続する。
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Causes of Carryover |
当初の予定にはなかった小型のインキュベーターでの栽培では正常に生育しない品種が多数観察された。そのため、窒素分析にかかる費用が当初の計画より少なくなった。症状を大幅に改善する方法が判明したことから、次年度は使用する小型のインキュベーターの数を、当該年度の2台から5台に増やし、品種評価の遅れを挽回する。
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