2021 Fiscal Year Research-status Report
植物工場でのパッションフルーツ果実の周年・多収生産に関する基礎的研究
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20K06012
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大川 克哉 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 講師 (00312934)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | パッションフルーツ / 葉果比 / 着果 / 無機成分吸収特性 / 炭酸ガス / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の実験では,まず葉果比の違い,すなわち葉果比を5,7,9および11とした場合の果実品質に及ぼす影響を明らかにした.その結果,葉果比9および11とした場合,葉果比5および7にした場合と比べて,可溶性固形物含量や酸含量には違いがなかったが,果重および果径は有意に大きかった.このことから,大果生産を目的にした場合のパッションフルーツの適正葉果比は9前後であると考えられた.そこで,新梢において8節間隔で着果させた場合(葉果比83)と開花した花すべてに受粉した場合(葉果比6)とで,花蕾および花発育,着果,果実品質および果実収量に及ぼす影響について調査したところ,葉果比6区では正常に開花した花数が少なく,着果しない柱頭直立花や正常花でも着果しない花数および花芽分化しない節数が多くなり,花発育や花芽分化に葉果比が強く影響することが明らかとなった.一方,果実重は葉果比8区で有意に大きくなったが,果実収量は着果数の多い葉果比6区で大きくなることが明らかとなった.また,この両区では培養液中無機成分の吸収パターンにも違いが認められ,新梢基部に集中的に着果した葉果比6区では,着果直後にCaおよびK吸収が急増し,これらは果実に分配されているものと推察された. 一方,周年果実生産を行う方法として定植時期をずらした栽培法が考えられる.そこで,4月,7月および9月の3時期に苗を定植して栽培を行ったところ,7月定植では8~9月の高温期に一時的な新梢伸長停止期が認められた.また,開花数は7月定植で,着果数および果実収量は7月および9月定植で他区よりも少なかった. 炭酸ガス施用が新梢生育および果実品質に及ぼす影響については,炭酸ガスを施用すると果実重が増加することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年の実験では2020年の実験では明らかにしていなかったパッションフルーツの葉果比の違いが果実品質および果実収量に及ぼす影響,すなわち大果生産を目的にした場合の適正葉果比は9前後であり,収量を重視した場合は6程度であることを明らかにすることができた.また,2020年の実験において受粉20日後にかけて果実中のカリウム含量が急増したが,2021年度の実験から着果直後に培養液中のカリウム吸収量が急増していたことから,吸収されたカリウムの多くが果実へ分配されていることを明らかにすることができた. 一方,炭酸ガス施用の効果については2021年の実験において冬季作型の中で,検討したが,炭酸ガス施用の時期が新梢の摘心後になってしまったため,花芽分化や花蕾発育,着果に及ぼす影響については検討することができなかった.この点については2022年の実験で,閉鎖系の人工光環境下で検討する予定である. また,周年果実生産を目的にした作型の多様化に関する実験では,定植時期により新梢伸長に大きな違いがみられ,7月定植では新梢伸長が一時的に停止した.これは根圏の高温化が要因であると考えられるが,周年果実生産を行う上でこの現象は大きなネックとなるため,その要因と解決法について2022年度の実験で検討していきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の実験では,2021年の実験において温室条件下での冬季作型での炭酸ガス施用の効果が十分評価できなかったことから,まず閉鎖系の人工光条件下においてパッションフルーツの高濃度炭酸ガス条件が花芽分化,花蕾発育,開花,着果,果実品質および培養液吸収特性に及ぼす影響を評価する. 次に,夏季に苗を定植した場合に生じる一時的な新梢伸長停止の要因を明らかにするために根圏の冷却処理を行い,新梢伸長や花芽分化,花蕾発育,果実品質,培養液吸収特性に及ぼす影響を調査する.また,これまでの本実験の結果および過去の報告から高温は花芽分化に対して阻害的に働くことが明らかである.しかし,安定的な周年果実生産を行うためには安定的な花芽分化が必要不可欠であり,花芽が分化する新梢先端部への局所冷却が花芽分化に及ぼす影響を明らかにする. 周年的果実生産を行うもう一つの方法として,長期間継続的に新梢を伸長させる栽培法が考えられる.そのような栽培を異なる葉果比条件下で行い,各節における花芽分化,花蕾発育,着果および果実品質について明らかにし,周年的長期間の栽培が可能かどうか検討する.
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